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世界が注目する抹茶×お酒!日本茶の魅力を発信する京都のバーを訪ねて

2024.08.01

 
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カウンターに立つ大城さんの画像

世界に注目されている日本茶。特に抹茶は、香りや味わいのみならず、茶道の文化も含めて人気です。魅惑の抹茶カクテルをつくり、京都から世界へ、お茶の魅力を発信するのは、バーテンダーの大城友典さん。大城さんが生み出すお茶とお酒の世界をご紹介します。

目次

1.朝に開店する珍しい京都のバー「何生庵」とは?

大城さんが抹茶をたてる画像

芸舞妓が行き交い料亭が立ち並ぶ、京都の花街・祇園。巽橋のほど近く、朝に開店する隠れ家的バー「CLASSIC TEA & COCKTAILS ぎをん新橋 何生庵(かしょうあん)」で出すのは、丁寧に点てた抹茶とリキュールを合わせた、「お酒と抹茶」の、まさかのカクテルです。

お茶の常識を覆したのは、茶道を嗜む、若きバーテンダー・大城友典(おおぎともすけ)さん。「自然光で見る抹茶の緑が一番、きれい。夜のバーのダウンライトではこの色は表現できません」と話します。

「お茶ってこんなにおいしかったの?」と、華麗なる抹茶の芳香に、身も心もほどけていくよう。投打の二刀流で熱狂を巻き起こす野球選手のように、この味は世界に伝わっていく——。そんな予感をさせる、日本茶の新境地です。

誕生の背景にあるのは、かのバーテンダーの「本物の日本茶の魅力を、海外に伝えたい」という熱い思い。茶道でも抹茶ラテでもない、日本茶の新しい表情に迫ります。

何生庵の画像

「何生庵」は2021年秋のオープン以来、茶の湯とカクテルの世界観を融合させた「お茶のカクテル」を提案してきました。お茶のリキュールを使ったものはこれまでもありましたが、自ら点(た)てた抹茶を使用するカクテルは、日本のみならず、茶どころの京都においても大変珍しい試みといえます。

世界に誇る京都発のスタンダードカクテル。そんな予感を抱かせる一杯が生まれた背景には、大城さんと茶道の出合い、そして海外での経験がありました。

2.茶道がきっかけでバーテンダーに!?異色の店長・大城さん

沢山の茶器の画像

大城さんは京都市出身。初めて抹茶を点てたのは18歳、高校生のときだったと振り返ります。

「バンド仲間だった同級生のお母さんがお茶の先生で。メンバー4人で茶事に挑戦したんです」

後に師となる友人のお母さんの指導の元、ぎこちないながらも初のお点前を披露した大城さん。手にしていたギターが気づけば茶筌(ちゃせん)になっていた、と笑います。大城さんの意思で稽古はその後も続けることに。頭で覚えるのではなく、からだで覚える。「感じる」ことに重きを置いた稽古を通じて深まったのが、日本文化への理解でした。建築に器、文学や歴史。茶道を起点に、どんどん広がる世界に魅了されたのです。

シェイクする手元の画像

実はバーの扉を叩いたのも、師のアドバイスがきっかけでした。「バーで働けば、スマートさが身に付くよと師匠に言われました」。大学一年生でアルバイトを始めて以来、37歳になった今も続いているバーでの仕事ですが、途中、時代劇の役者を目指して上京した時期もあったそう。しかし自身の夢に区切りを付け、28歳で帰京。これが、バーテンダーとしての再スタートでした。

京都を離れている間も師弟関係が途絶えることはありませんでした。26歳で師のおともでフランス、そして33歳のときにアメリカのワシントンD.C.へ。これまでは茶事の手伝いでしたが、アメリカでは初めてバーテンダーとして参加することに。しかし、アメリカでは抹茶、すなわちグリーンティーは、抹茶のリキュールを使った甘い飲み物という位置付け。抹茶本来の味わいがまったく認知されていない中、使命感にかられて考案したのが、自ら点てた抹茶を使ったカクテルでした。

というのも、カクテルはアメリカ発祥。正座をして飲む抹茶は外国人にとってハードルが高いけれど、椅子で飲む抹茶のカクテルならば、お茶本来の味を伝えられる。水質が違うため日本にいるときのように抹茶が点たないなどのトラブルに見舞われながらも、現地でのこの経験が後に誕生するお茶のカクテルの礎(いしずえ)となったのです。

気がつけば、人生の一部になっていた茶道とカクテル。大城さんが歩んできた二つの道が交差した瞬間でもありました。

「京都でもいつか、お茶のカクテルを提供したい」と、海外での経験を通じて自分のやりたいことが明確になった大城さんでしたが、実際、夜になるとバーはスピード勝負。点茶(てんちゃ)に時間を要するお茶のカクテルの、夜の提供は難しいものがありました。そこで着目したのが、朝から昼の営業でした。

3.抹茶にはカクテルの常識が通じない!試行錯誤の日々

抹茶のカクテルを作る画像

お茶がメインとなる存在感を放つような、カクテルをつくりたい——。目指すのは、お酒とお茶が互いを高め合うようなカクテル。アメリカで提供したカクテルは、抹茶をビールやシャンパンで割った簡易なものでしたが、「専門店にしたい」と決めたからには、そうはいきません。オープンを控え、ひとりで配合を考える日々。「簡単にできると思っていたけど……考えが甘かったですね」と大城さん。その言葉通り、納得のいくカクテルのレシピづくりは難航を極めました。

「まず、今までの常識が通用しない。カクテルづくりの、一切の方法論を忘れるところから始めました」

たとえば、カクテルには柑橘(かんきつ)系のジュースが多く使用されますが、実際につくってみたら柑橘の酸味と抹茶の味がまったくといっていいほどなじまない。さらには、カクテルの必需品であるトニックとの相性も散々なものでした。片っ端からさまざまな組合せを試した結果、お茶とお酒以外に使用できると判断できた基本素材は、水・甘み・ソーダのみ。「たったこれだけで、多彩な味わいのカクテルがつくれるのだろうか?」と、大城さんは一瞬、目の前が暗くなったと振り返ります。

試行錯誤を繰り返し、納得のできるカクテルの完成までに要した月日はなんと1年。美しいお茶のカクテルは、大城さんのたゆまぬ努力の結晶でもあるのです。

「お客様に『想像とは違う味!』と驚いた顔をして召し上がっていただけるとうれしいですね。私はお湯で点てて飲むよりも、甘みを加えてカクテルにするほうが、より抹茶の味わいを感じられるように思います」

一本のチャノキから生まれる表情豊かなお茶の数々は、大城さんにとってロマンそのもの。現在は抹茶がメインですが、今準備を進めている次なるテーマは「煎茶」です。

「煎茶は味わいが繊細なので扱いが難しいのですが、お酒に漬け込むことで個性を表現できるのでは」と、現時点での研究成果を打ち明けてくれました。

「抹茶を点てたり、煎茶を淹れたりする時間も含めて、ゆったりとした時間の流れ自体を楽しむのがお茶の楽しみ。このバーでは、その一端も表現したいのです」

4.大城さんが考案した、唯一無二の抹茶カクテル

大城さんの最終目標は、お茶のカクテルを通じて、さまざまなお茶をもっと身近に感じてもらうこと。次からは、大城さんが考案したオリジナルのお茶のカクテルをご紹介します。

❶ボタニカルな味の競演!抹茶+ジンのグリーンソーダ

抹茶+ジンのグリーンソーダの画像

さまざまな組合せを試した結果、一番早くに考案されたはじまりの一杯がこのグリーンソーダです。

「ウォッカは抹茶の強い味に負けてしまいました。でも、それ以外のスピリッツ(蒸留酒)と抹茶はとても相性がいいんです」

抹茶とジンはまさしく、互いの個性を高め合う存在。大城さんが選んだのは、ハーブなどの植物の香りを加えたボタニカルジンとの組合せでした。抹茶とジンは植物由来のもの同士、鼻から抜ける青い香りが爽快(そうかい)。ドライなテイストながら舌に残るほのかな甘い余韻が後を引く、大人のグリーンソーダです。

こいまろ抹茶 1,620円(税込)

❷まるで和菓子!?抹茶+テキーラが生み出す芳醇な味わい

抹茶+テキーラの画像

「初めて飲むのに、知っている和菓子のような味がする」。大城さんの素直な感想が、そのまま「飲む和菓子」という銘(めい)のカクテルになりました。

組合せたのは南米のテキーラと日本の抹茶。「テキーラは個性が強すぎるから、まさか抹茶と合うわけはないだろう」と冗談半分で試してみたところ、驚きの相性のよさから定番になったという意欲作です。

抹茶が清涼なテキーラの味に厚みをもたらし、杏仁(あんにん)を原料とするリキュール、アマレットの風味がふわり広がります。豊かな味わいは、カクテルと茶菓子と抹茶を同時にいただくかのような、不思議な感覚です。

抹茶 万寿の昔 6,480円(税込)

❸風雅な口あたり!抹茶+ブランデーを和みの味に昇華

抹茶+ブランデーの画像

こちらは、「御所車(ごしょぐるま)」というなんとも風雅な名前のカクテル。御所車とは平安時代の牛車の異名で、聞くと、その名は、ブランデーをベースにしたカクテルの代表格「サイドカー」に着想を得ているとのこと。思いがけない由来をもつ一杯です。

ブランデーと抹茶。共通点のない二つの素材の橋渡しをするのが、自家製シロップの甘みです。アルコール度数が高く、強い印象のブランデーですが、抹茶と出合うことで口当たりもまろやかな和みの味わいに変化するのもカクテルのおもしろさ。隠し味に忍ばせたオレンジリキュールもいいアクセントです。

抹茶 若緑の昔 3,564円(税込)

❹香りにうっとり!抹茶+ハーブティーのノンアルコールカクテル

抹茶+ハーブティーのノンアルコールカクテルの画像

「抹茶と薔薇」は、口の中でどんどんふくらむ華やかなバラの香りにうっとり。濃いめに点てた抹茶を、急速に冷やし色と香りを閉じ込めたローズペタルティーで割ったノンアルコールカクテルです。

「『えっ、ハーブティーと合せるなんて!』と驚いてくださる方が多いですね」と大城さん。あえて違和感を感じさせる香りを重ねることで、抹茶に複雑味が生まれ、それぞれを単品で飲むよりも奥行きを感じさせる一杯に仕上がりました。

抹茶とハーブとの相性のよさは折り紙付きで、ほかにもレモングラスやミント、ラベンダー、カモミールの組合せも楽しめます。

抹茶 八千代昔 3,240円(税込)

5.まとめ

京都・祇園で朝に開店するバー「何生庵」では、バーテンダーの大城さんがつくる、茶の湯とカクテルの世界観を融合させた「お茶のカクテル」を楽しめます。

茶道がきっかけでバーテンダーの道を歩き始めた大城さん。海外での経験を通じて、京都から世界へ抹茶の本当の味わいを発信したいと、お茶がメインとなるカクテルづくりに挑戦します。ところが簡単にはできず、試行錯誤の日々が続き、ついに一年後、抹茶の繊細な美味しさを楽しめるカクテルが完成!

抹茶にジンやテキーラ、ブランデー、ハーブティーを合わせたオリジナルの抹茶カクテルは、個性豊かな唯一無二の味わいです。抹茶の魅力が存分に活かされたカクテルを、ぜひ京都で味わってみてくださいね。


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