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「お菓子とお茶」ペアリングの原則を京都の人気菓子職人に聞く!
2023.12.01
ティーペアリングとは、お茶と料理・お菓子などを組合せ、相性を楽しむこと。実は、ティーペアリングには基本の考え方があるのです。今回はお菓子の専門家として、その創作性が話題の京都「みのり菓子」の店主・小林優子さんにお茶とお菓子の最高のティーペアリングの原則をお聞きしました。
目次
【教えてくれた人】小林優子さん
京都生まれ、京都育ち。製菓学校卒業後、代々続く、京菓子屋に入社。2016年、自身の求めるお菓子のかたちを探すため、店舗を持たないかたちで「みのり菓子」を立ち上げる。新旧の和菓子の技法を合せながら味や色、かたち、見せ方を楽しめる和菓子づくりを目指す。ティーインストラクターの資格も持つ。
1.ティーペアリングとは、お茶と食べ物の魅力を引き出す組合せ
「ティーペアリング」とは、お茶(ティー)と食べ物(ペアリング)を組合せて、お茶と食べ物が相互に引き立て合うような組合せを考えることをいいます。お茶と食べ物の新しい組合せを探求して楽しむことができるので、お店ではもちろん、自宅で楽しむ人も増えています。ティーペアリングは、ワインや日本酒などのお酒とのペアリングとは異なり、お酒が飲めない人や、飲めない状況でも楽しめるのも魅力の一つです。大切な方へのおもてなしにもぴったりです。
2.創作性がすごい!京都で話題の「みのり菓子」
みのり菓子の店主・小林優子さんは、製菓学校卒業後、代々続く有名京菓子屋に入社し、2016年、自身の求めるお菓子のかたちを探すため、「みのり菓子」を立ち上げました。自分の店を持つことにより、純粋にお菓子をつくることが楽しいということに気づいたのだそうです。店舗を持たず、京都市内のシェアカフェなどにお菓子の材料や道具を運び込んで、「その場でお菓子をつくってお客様にお出しする」というスタイルを貫いています。
新旧の和菓子の技法を合せながら味や色、かたち、見せ方を楽しめる和菓子づくりを目指していて、どこにもない「みのり菓子」独自の世界から生まれるお菓子は、その美しさと、唯一無二の味わいで多くの人を魅了しています。
さまざまなメディアに取り上げられたり、みのり菓子の公式Instagramでは1万人以上のフォロワーがいたり、今、京都で注目されている菓子職人です。
3.ティーペアリングの原則
「みのり菓子」の小林優子さんは、実は大のお茶好き。お菓子との相性を学ぶためにティーインストラクターの資格を取得するなど、お茶は日々の暮らしや仕事に欠かせない、とても大切なものだといいます。
「温度帯や茶葉の量に気をつけて、お茶をじっくり味わってみました。きちんとお茶を淹れるとそれぞれのお茶の特長や個性が際立ってきて、日本茶ってこんなにも奥行きがあって味わい深いものなの? と改めて感動しました」
次の項目から、「みのり菓子」の小林優子さんにつくりおろしていただいたお菓子とともに、お茶とお菓子の組合せ、ティーペアリングの原則を具体的にお聞きしました。
❶個性のあるお菓子には「玉露」〜赤山椒がきいたチョコレート羊羹とともに〜
玉露をいただくと、味、香りともに、とても主張するお茶なのだと実感します。広がる旨みが素晴らしく、まるで料亭のお出汁を飲んでいるかのよう。舌触りもトロリとしていて、喉の奥までしっかりと絡みついてきます。
玉露の強さに負けない、主張のあるお菓子を合せたいと思い、こし餡にカカオマスを加えて、寒天で固めた、しっかりした風味のチョコレート羊羹をつくりました。
まったりと濃厚な口どけが、玉露のトロリとした舌触りと一つになって……。二つの個性と主張が、渾然一体となってとろけゆく感覚を心ゆくまで堪能できます。
【玉露】摘み取り前の約20日間、直射日光を遮る覆下をすることで、旨みを蓄えたお茶。
❷さわやかな甘みのある寒天なら「煎茶」〜金木犀の香りの寒天ゼリーとともに〜
ゆっくり丁寧に急須で煎茶を淹れてみると、ふわりと甘みが広がり、雨上がりの青葉のような、爽やかな中に青味がこもる香りがすっと立ってきました。この香りに合せたのは、私が大好きな秋のお菓子・金桂羹。実家の庭で摘んだ金木犀の花をシロップ漬けにして、寒天を合せて固めました。鼻から抜けるような金木犀の香りが、煎茶の青みがかった香りと一つになり、素晴らしいハーモニーを見せ、長い余韻となって続きます。
玉花の微かな苦味が煎茶の爽やかな甘みをより引き立たせ、澄み切った味わいに。秋の花を食べるという贅沢なお茶時間をどうぞ。
【煎茶】日光を遮らずに栽培し、新芽を使い、何段階にも分けて茶葉を揉みながら乾燥させていく。さわやかな香りが特長。
❸焦がしたブリュレなら「玄米茶」〜無花果と白味噌のブリュレとともに〜
玄米茶は幼い頃から飲み慣れたお茶で、茶葉のやさしい風味と玄米の「花」の香ばしさが好きです。この香ばしさに瑞々しい無花果とまろやかな白味噌のお菓子を合せたいと思いました。
半分に切った無花果にゴマをまぶし、クリームチーズと合せた白味噌を絞って、バーナーで表面をこんがり炙りました。白味噌の焦げ目の香ばしさが玄米のそれと共鳴して、無花果の果肉がそれを一つに包み込み、甘い香りがふわりと開きます。
お茶を飲みつつ、お菓子を噛みしめるほどに、お茶の中の玄米が“ここにいるよ”と、存在感を見せるようで、お茶も一緒に食べているようなワクワクした気持ちになります。
【玄米茶】緑茶と炒った米を同量ずつ混ぜてつくられる。炒り米の香ばしさとさっぱりとした味わいが魅力。
❹カラメルなら「ほうじ茶」〜カラメル味の創作菓子とともに〜
ほうじ茶はなんといっても、力強い香りとカラメルのような甘ほろ苦さが魅力。奥深い味わいのお茶に、秋色を纏ったこっくりとしたお菓子を組合せてみました。
裏漉ししたバターナッツかぼちゃのスープの中に、焦がしカラメルの寒天を浮かべて、さらにカラメルを回しかけます。ほうじ茶の香味とカラメルの甘ほろ苦さが、お茶とお菓子の一体感を醸し出し、さらに、まろやかなかぼちゃのスープがお茶の苦みを和らげて、まさに相性よしのペアリング。夕日に照らされた紅葉のような、オレンジから茶色への色彩グラデーションも楽しんでください。
【ほうじ茶】煎茶、番茶、茎茶などをキツネ色になるまで強火で炒って、香ばしさを引き出したお茶。
4.まとめ
京都で注目を集めるみのり菓子の店主、小林優子さんのお茶とお菓子のティーペアリング、いかがだったでしょうか?
個性のあるお菓子には「玉露」、さわやかな甘みのある寒天なら「煎茶」、焦がしたブリュレには「玄米茶」、カラメルなら「ほうじ茶」という原則を教えていただきました。
どのティーペアリングがおいしいのか、探す過程こそが楽しいもの。皆さまも小林さんの組合せを参考に、自身のお好みのお菓子を組合せて、自分だけの最高においしいティーペアリングを見つけてみてください。自宅でのお茶の時間がもっと楽しめること間違いありません。