日本のお茶の産地

日本のお茶の産地

「お茶の名産地」と聞くと、どの地域をイメージするでしょうか。現在では日本各地でお茶の栽培が盛んに行われていますが、ここでは日本で最初にお茶の生産を始めた京都宇治や、そのほかの代表的なお茶の産地をご紹介したいと思います。それぞれのお茶の特徴や違いを見ていきましょう。

日本緑茶の発祥地・京都宇治田原

元々お茶は、今の中国の内陸部(雲南省近辺)から世界各地に広まったのが最初と言われています。日本には中国からお茶が伝えられ、平安時代にはすでに抹茶のようにしてお茶を飲む習慣が見られたようです。しかし、このころのお茶は高級品であり、ごく一部の上流階級しか飲むことができませんでした。
現在のような煎茶が登場するのは、江戸時代になってから。永谷宗円によってお茶を作る新しい製法が生み出されました。これは茶葉を蒸した後に揉みながら乾燥させる製法です。この製法が生み出されたことにより、水色が緑色の緑茶と言われるお茶が誕生しました。この永谷宗円が生まれ、新しいお茶の製法を生み出した地が京都宇治田原だったため、日本緑茶生産の発祥の地と言われるようになります。現在でも宇治茶は静岡茶、狭山茶と並んで「日本三大茶」の1つと呼ばれています。日本を代表するお茶の産地として、今でもお茶といえば宇治と呼ばれるほどのブランド力を持っています。

その他の地域のブランド茶

狭山茶

狭山茶は埼玉県西部から東京都の西多摩地域周辺で生産されています。「狭山火入」という江戸時代から続く伝統の火入れ製法により、香ばしく濃厚なお茶の味が特徴です。
狭山茶は主に埼玉県狭山市を中心に生産されており、2016年の栽培面積は884ヘクタールで、荒茶収穫量は652 トン、規模的には大きくありませんが、ブランド力が高いためお茶の価格も高い傾向があります。

静岡茶

静岡茶は静岡県で生産されているお茶で、主に牧之原台地とその周辺で栽培されています。栽培面積、生産量とも日本シェアのおよそ4割を占めており、2016年の栽培面積は17,400ヘクタール、荒茶生産量は30,700トンと、どちらも日本一の規模。「静岡といえばお茶」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。静岡茶は協会によって厳格な表示基準があり、静岡県内茶葉を100%使用したものを「静岡茶」、静岡県内茶葉を50%以上使用したものを「静岡茶ブレンド」と表記することができ、基準に満たないものは静岡茶と呼べません。静岡茶は通常よりも蒸し時間が長い「深蒸し茶」が特徴で、濃厚な味わいが特徴。使われている品種はやぶきたが主流で、さわやかさと渋みのバランスが良い茶葉を中心に生産されています。

伊勢茶

伊勢茶は三重県内で生産されているお茶で、2016年の栽培面積は3,000ヘクタール、生産量は6,370トンとも日本で3番目の規模を誇っています。伊勢茶の歴史は長く、平安時代にはすでに栽培が行われていた記録があります。お茶の栽培に適した土地でもあるため、濃厚で葉肉が厚いのが特徴。主に北部ではかぶせ茶、南部では深蒸し茶が栽培されています。

八女茶

八女茶は福岡県内で作られたお茶のブランド名で、主に福岡県八女市・筑後市、八女郡広川町で生産されています。2016年の福岡県内の栽培面積は1,550ヘクタール、生産量は1,870トン。
昼と夜の寒暖差があり、霧が出やすく太陽光を遮る独特の土地柄が玉露の生産に向いていたため、玉露の生産が盛んに行われています。知名度は静岡茶などに比べると低いものの、八女茶は高級茶・玉露の生産地としての認知も高まってきています。
品種は「やぶきた」が主力で、「かなやみどり」、「おくみどり」、「さえみどり」なども生産されています。

宮崎茶

宮崎茶は宮崎県内で生産されているブランド茶で、主に日向市、都城市、串間市、川南町などで生産されています。2016年の栽培面積は1,420ヘクタール、生産量は3,760トンと全国4位、全国各地のお茶市場が衰退する中、現在でも市場を拡大している比較的新しいブランドです。宮崎茶の品種は「やぶきた」が主流ですが、近年では寒さに強い「きらり31」と呼ばれる早生品種が登場し、煎茶から玉露まで幅広くカバーできるお茶として注目されています。

鹿児島茶

鹿児島茶は鹿児島県で栽培されているお茶で、2016年の栽培面積は8,520ヘクタール、生産量は24,600トンと、ともに静岡県に次いで日本で2番目の規模を誇っています。品種は「やぶきた」に加えて、香りや色がよい「ゆたかみどり」「さえみどり」や「あさつゆ」などがあります。鹿児島のお茶は元々生産だけが主流で、県外で仕上げられていることが多く、ほとんど知名度がありませんでしたが、近年では知覧茶をブランド化し、知名度を上げる取り組みが行われています。

このように日本にはたくさんのお茶の産地があり、それぞれの気候や地形によって味や香りなども違います。上記を参考に全国各地のブランド茶を味わってみて、その違いや自分の好みを見つけてみるのも楽しいかと思います。