お茶を育てる流れと栽培方法

お茶を育てる流れと栽培方法

お茶は、比較的温暖で四季を通じて適度な降水量のある地域、日本でいえば関東以西で主に栽培されています。経済的流通のある栽培地としての北限は新潟県とされていますが、過去には、秋田県や岩手県でも農家の副業として栽培されていたことがあるそうです。お茶は、湿度に敏感だったり、慎重な土壌作りも重要だったり、栽培する土地ごとに工夫が必要です。今回はお茶が栽培されている環境についてご紹介します。

お茶が育つ条件

お茶は、1年間の平均気温が14度~16度が適温、夏場は40度以上気温が上昇せず、かつ、冬場の最低気温が-5度より下がらない地域で栽培するのが適していると言われています。また、お茶の栽培開始から摘採を終える9月上旬にかけて適度の降水量(年間で1500mm程度)が保たれていることも重要です。そして、天候と同様に重要な要素となるのが土壌です。お茶の栽培には、大量の水分を必要とするため雨水をたっぷりと蓄える透水性、保水性、通気性のある土壌と排水対策の整備をしなければなりません。またお茶は、仮に種子を植えれば30年以上芽を出し続ける永年生作物。非常に細い根をはりめぐらせるため、土壌が悪かったからと言って、安易に別の土地を求めるわけにはいかないので、しっかりと土の性質を見極めた上で栽培を始めます。

茶園の構成  

茶畑と言えば、ふっくらと半円を描く「かまぼこ型」の畝が並ぶ景色をイメージする方が多いのではないでしょうか。隣り合う畝との間は(株間)一定間隔で規則正しく揃えられており、摘採の最盛期には、一面に美しい緑色が広がります。株間の間隔は、景観だけではなく、お茶の生育にも大きな影響を与えます。間隔がバラバラで粗雑な植え付けがされた茶畑では、剪枝や裾刈り作業効率が悪くなり、茶葉の生育を阻害する恐れがあります。作業できる樹高で最大限に日光を浴びせることができるように、茶園ではこの間隔にとても注意を払っているのです。

お茶の栽培方法の2種類

お茶の栽培方法には、日光下で栽培する「露天栽培」と日光を遮って栽培する「覆下栽培」の2種類があり、味わいが大きく異なります。

露天栽培

新芽から摘採までの間、茶葉全体に日光を浴びさせる栽培方法。茶葉が光合成を十分に行われることで、お茶の甘み成分である「テアニン」が「カテキン」に変換され、渋みのある爽やかな味わいになるのが特徴です。露天栽培によって栽培されるお茶には、煎茶、番茶が挙げられます。

覆下栽培

覆下栽培では、新茶が摘採される直前の約20日間、茶園全体をよしずや稲わらで覆い日光を遮断します。もともとは、新茶を霜の被害から守るために施されたものでしたが、被覆をするとお茶の味わいが増すことがわかって以来、高級茶の栽培方法として確立されました。茶葉の光合成は停止してしまいますが、その分、テアニンの含有比率が増加。深みのあるまろやかな甘みが生まれます。覆下栽培によって栽培されるお茶には、玉露、かぶせ茶、碾茶(抹茶)が挙げられます。

 
ペットボトル入りのお茶やティーバッグが普及し、お茶の消費量が急増した反面、急須で淹れたお茶を知らない子供たちが増えているという話も聞かれます。つい、手間のかからないほうを選びがちですが、茶葉から選んでお茶を飲むことで、産地や栽培方法による味や香りの違いを感じることができるでしょう。こうした日本固有の文化に触れながら急須で入れたお茶を飲む機会を持ってみてはいかがでしょうか。