お茶の品種の違い
多くの方々が茶の木と呼んでいる木は、冬でも葉を落とさない常緑樹の一種です。ツバキやサザンカの仲間で、お茶の原材料以外に、観賞用としても栽培されています。日本には、平安時代に中国から渡来したといわれており、栽培地の気候や品種改良により100種類以上もの品種が生まれました。最近では、異なる品種をブレンドしたものが多数販売されていますが、それぞれの品種の個性を学び、楽しんでみるのもおすすめです。
茶の木には品種がある
茶の木は、ツバキ科に分類される常緑樹で、学名は「ツバキ科ツバキ属の常緑樹カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)」です。日本では、茶樹またはチャノキと呼ばれています。毎年秋ごろになると白く小さな花(茶花)を咲かせ、成長すると1メートル以上も根を伸ばします。
品種は様々あるものの、茶の木は世界各国で栽培されています。生育環境が異なると葉の大きさや形、木の高さも異なり、アッサム種(大葉種)と中国種(小葉種)に大別されます。寒さに弱く発酵しやすいアッサム種は紅茶向きで、茶葉を発酵させないで作る日本茶には不向きのため、日本の緑茶は、耐寒性の強い中国種です。同じ中国種の中でも、種子の交配方法や栽培環境によって、特性が異なります。
日本の茶の木の代表的な品種
茶の木は、東北南部から沖縄の各地で栽培されています。このうち、日本茶として栽培されている茶の木には、以下のような品種があります。
やぶきた
日本国内で栽培されている茶の木の約75パーセント以上を占めている品種です。日本の気候で栽培しやすい品種ということもあり、代表的な品種の一つで、旨味、渋み、香りともにバランスが良く、煎茶や深蒸し茶、玉露など幅広く親しまれています。
おくみどり
やぶきたと静岡在来の種との交配により生まれた品種です。主に近畿~九州で栽培され、爽やかですっきりとした味わいが楽しめます。前述のやぶきたよりも、収穫が遅いため、繁忙期が重ならないようにとこの品種を採用されているようです。茶葉の色が大変鮮やかで、柑橘類のような爽やかな香りがし、深みのある味わいを特徴としています。
べにふうき
アッサム種を母とし、インドから取り入れた品種との交配により生まれた品種です。もともと紅茶用として開発された茶の木を緑茶の製法で作ります。やや渋みが強く香りが良いのが特徴です。抗アレルギー機能をもつメチル化カテキンを豊富に含むことから、花粉症対策として健康補助食品などにも利用されています。
京都宇治で栽培されている宇治品種
日本で栽培される茶の木は上記のやぶきたがほとんどの割合を占めていますが、お茶の産地として歴史のある京都宇治では、独自の品種も育成されてきました。例えば、抹茶(碾茶)であれば、あさひ・さみどり・てんみょう・うじひかり、玉露用であれば、ごこう・うじみどり・ほうしゅんなどが有名です。これらの品種は宇治品種と呼ばれ、優良な品種を掛け合わせて作られ、色味や香味など特に優れた品種とされています。宇治品種は、宇治茶ブランドを支える、大切な品種なのです。
同じ茶の木を原材料としたお茶でも、栽培された環境や品種によって味や香りが異なります。あらかじめブレンドされた茶葉は、「味よし、色より、香よし」と茶師がそれぞれの特徴を引き出して、おいしく作られたものですが、、茶樹からとれたそのまんまを楽しむなら品種単一のものも、それぞれの個性が堪能できて、楽しいものです。