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レトロ好きさん必見!京都で古きよきものに出合えるおすすめのお店3選
2026.10.01

古都・京都には、レトロな道具や和装本に出合えるお店があります。そこには、先人たちが生み出した古きよきものや文化を守り、未来へ繋ごうとするお店の方の熱い想いと、それを支えるお茶がありました。昔懐かしい照明・生活道具・木版画を扱う3つのお店をご紹介します。
1.人々の暮らしを照らしてきた「あかりの店」【タチバナ商会】

お店のカウンターでにこやかにお客様を迎える店主の佐藤成正さん。佐藤さんの前に吊り下げられた少し青みがある照明は夏用のもの。
昔ながらのあかりに照らされて
手書きの「あかりの店」の文字に導かれ、京町家に一歩入ると、そこには天井から無数の照明が下がる不思議な光景が広がります。ここは、明治から昭和期の照明を中心に扱うタチバナ商会です。たくさんの照明に圧倒されていると、ご主人の佐藤成正(しげまさ)さんがにこやかに出迎えてくれました。
手ずから淹れた番茶でお客様をもてなし、話に花を咲かせる佐藤さん。「お茶を飲みながらよくお客様と話をするんです。おしゃべりが好きで、照明と関係ない話ばかりしていることも」と笑いますが、話の端々に古きよき照明への愛情が感じられます。
「明治・大正の頃は大量生産の技術がありませんでした。一つひとつ職人が創意工夫をこらしてつくっていたのです。丁寧な仕事ぶりがいいですよね」
花鳥風月を描いたもの、渦巻きが特徴のギリシャ雷文(らいもん)を施したものなど、照明の一つひとつに佐藤さんの手書きのコメントが付けられ、思わずクスッと笑ってしまうものもあります。
「この笠、少し青いでしょう」と教えてくれた照明は、夏用のものです。暑い京都で涼を感じられるように、模様替えのときに照明も涼やかなものに変えていたのだといいます。
「現代のように日本が豊かでなかった頃、ないならないなりに工夫をして、“足るを知る”で人は暮らしてきました。そこに、生活の本質を感じるんです」
白熱電球の少しほの暗さを感じる光も、魅力だと話します。「今はなんでも手に入るからか、“明るければいい”と、生活の本質が失われているような気がします。でも、家には家のちょうどいい明るさがあるんです」
“家で安らぐなら、少し暗いぐらいがリラックスできる”と考える佐藤さん。便利になった現代の生活ですが、限られたなかで職人が一つひとつ生み出した照明には、その時代だからできたぬくもりがあるのです。
穏やかなあかりの下で弾む佐藤さんとのおしゃべり。取材陣は、佐藤さんがよく飲むという香ばしい番茶をいただきながら「日本茶も生活の中で培われてきた文化ですね」と古きよき日本の暮らしに思いを馳せました。


京町家にびっしり吊り下げられた照明の数々。照明には、個性的なメッセージが付けられている。

ほっと落ち着く香りの番茶を飲み、くつろぐ佐藤さん。「若い頃は海外に憧れて、永住しようとまで考えていました。でも、馴れることができなくて。日本に帰って、改めて日本の古きよきものに気づきました」と話す。
タチバナ商会 佐藤成正
京都生まれ。若い頃は海外を放浪。30歳のときに帰国し、曾祖父が始めたタチバナ商会を引き継ぐ。
【住所】京都市左京区岡崎南御所町22-11
【電話】075-762-0087
【HP】http://www.sukiyalamp.com
2.旧家から受け継いだ生活道具の店【古道具店呱々】

「商品を選ぶときには、マンションなど現代的な住まいや今の暮らしにも合うものを、と心がけています」と話す店主の平野まさこさん。
暮らしに寄り添う古い道具をセレクト
京都の銀閣寺や哲学の道などのほど近くに古道具店呱々(ここ)はあります。大通りにあるカフェと古書店の間、人一人がちょうど通れる細い路地を抜けたひっそりと静かなエリアで、週末のみオープンしています。
「こんにちは」と、ドアの向こうからやさしい笑顔で迎えてくれたのは、店主の平野まさこさん。職人さんの力を借りつつ自身でリノベーションした古民家は、ギャラリーのようでもあり、隠れ家のようでもあり、素敵な空間です。
「メインで扱う商品は、主に京都や周辺地域の古いお家から出たもの、いわゆる“残置物”なのです」と平野さんが教えてくれました。旦那さんの準さんが、京町家や洋館といった物件を扱う住宅会社「ルームマーケット」を営んでおり、改修前などに不用品として処分されるものを“救出”するといいます。
陶器やガラスのうつわやカゴ、塗りの椀などの木製品……、ほこりだらけで平野さんの手元にやってきたものを洗い、使える状態にして次の誰かのもとへ届けます。赤ちゃんの産声を意味する“呱々”は、その一連の流れにぴったりとの思いから店名となりました。
実は、平野さんはもともと古道具好きだったというわけではないそうです。お子さんが赤ちゃんだった頃、準さんの誘いで旧家の整理現場に見学に通い、いつしか集めた生活用具が大量になっていきました。自宅の一角などで販売するだけでは収まりきらなくなり、お店を開いたのだといいます。
「自分もそうだったように、古道具をふだんから使い、好きになってもらえたら、と思っています。実はいま、私が使っている銅製の急須も古いお家に眠っていたもので、半年くらい前に手に入れたお気に入りです」
来客があれば緑茶を淹れ、寝る前のひとときにはほうじ茶を、と平野さんは毎日お茶を楽しみます。この日、取材陣も古い陶器のうつわでお茶をいただき、すっかり古道具ファンになりました。「古道具が暮らしに寄り添ったもの、楽しさを与えてくれるものになれば」との平野さんの想いは、こうして確実につながっていくのです。

台湾で買い付けた古い染付けのレンゲや、豆皿など陶器類もたくさん並びます。

引き出しは大正時代や昭和初期に製造されたもの。

お店と坪庭をつなぐドアも古い建具で。

2階のストックルームにて。ここは月1回開催する「やさしい金継ぎ教室」の会場としても利用するそう。
古道具店呱々 平野まさこ
大阪府出身。2017年、現在地に「古道具店呱々」をオープン。日本、台湾、中国、韓国などの古道具を扱う。
【住所】京都市左京区岡崎南御所町22-11
【営業日】木・金・土曜の11時~17時(※不定休あり)
【Instagram】@kokohurudogu
3.江戸時代からの木版画を守り伝える出版社 【芸艸堂】

葛飾北斎作『北斎漫画』の版木を手にする京都本店社員の井上孝一さん。輪郭の黒い版のほかに、鼠(ねずみ)色、淡紅色の版がある。版木を包む新聞紙には、100年近く前のものも。創業以来、大切に守り伝えられている。
今も新しい木版画の美の魅力を伝える
京都市役所の西隣、寺町二条に店を構える芸艸堂(うんそうどう)は、明治24年(1891)に設立された、現在日本で唯一の手摺(てずり)木版和装本の出版社です。
江戸時代を代表する浮世絵師の葛飾北斎(かつしかほくさい)や伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)、京都画壇の竹内栖鳳(たけうちせいほう)など、名だたる作家の木版画が店内を彩ります。
その歩みを如実に語るのが、社内奥にひっそりとたたずむ版木蔵です。今では入手しづらいヤマザクラを使用した版木の束が、2階の天井までびっしりと並び、その歴史の重みに圧倒されます。
「創業以来蓄積してきた版木の数は、約10万枚にのぼります。江戸時代の古い版木も、注文があれば取り出して摺ります。ひとつの作品にも色数のぶんだけ版があり、作家や彫師・摺師など、手作業で完成させるからこそ宿る美があります」と話すのは、芸艸堂に勤務して20数年の井上孝一さんです。客先への営業や、博物館・美術館・メディアへの作品貸し出し、彫師・摺師の間を繋いだ新たな作品のコーディネイトなど、さまざまな業務に携わっています。
そんな井上さんの忙しい日々を支えるのは、京の老舗ならではの「お茶の時間」です。
「朝とお昼、社員5人で温かいお茶をいただいています。急須で淹れた煎茶を飲むと、仕事のスイッチが入りますね」今ではなかなか見ることのできない風景ですが、由緒ある老舗ならではの心づかいです。大学で美学を学び、10年ほど国内外を旅してから入社した井上さん。「当初は湯呑にあふれんばかりにお茶を淹れて叱られました」と照れ笑いしながら秘密を明かしてくれました。
そんな井上さんが感じる、木版画の魅力とは何でしょうか。
「近年は木版画をより身近に感じてもらおうと、作品をあしらった布小物やはがき、ご朱印帳など和の雑貨も展開していますが、本当によいデザインは、時を経ても古びないのです。たとえば琳派(りんぱ)の神坂雪佳(かみさかせっか)の作品は洗練されていて、現代の人が見ても新鮮に感じます」と教えてくれました。
洗練された木版画の美は、雑貨など新しいかたちに落とし込むことで国内外のファンを獲得し、いっそう輝きを増しています。こうして文化を守り伝える老舗をサポートするのは、日々のお茶の時間なのです。

左/大正5年(1916)西陣織物館編の図案集『綾錦』は、染織の名品を木版で色鮮やかに再現している貴重本。右/神坂雪佳の図案集『滑稽図案』は、明治36年(1903)の版木を使用(4,8000円+税)。

神坂雪佳のはがき(各150円+税)、歌川広重の猫のご朱印帳(2000円+税)。

瓢箪6つで「無病」を意味する湯呑はお母様の作。伊賀焼の急須とともに。
芸艸堂 井上孝一
1970年、滋賀生まれ。同志社大学で美学を学んだ後、10年ほど国内外を旅し、芸艸堂の社員に。
【住所】京都市中京区妙満寺前町459
【電話】075-231-3613
【HP】https://www.unsodo.net/jp
4.まとめ
明治から昭和期の照明、旧家から受け継いだ古道具、江戸時代から続く木版画など、京都には今も古きよきものが息づいています。そこには、ものを大切にし、その魅力を次の世代へ伝えようとする人々の想いがあります。レトロ好きの方はぜひ、昔ながらの文化や伝統を守るこの3つのお店を訪れてみてください。




