トップ > 131 未来への祈りを胸に 人が紡ぐ宇治茶まつり

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宇治茶まつりって?年に一度の宇治茶の祭典とまつりの担い手3人の話

2024.11.01

 
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山根さん通円さん鈴木さんの画像

日本茶のふるさと・京都府宇治市で、毎年10月に開催される「宇治茶まつり」をご存知ですか? 名水行列などの儀式やイベントで宇治川一帯がにぎわう、茶どころならではの祭典の歴史や見どころをご紹介します。さらに、まつりに携わる3人にインタビューを行ない、まつりにかける想いをお聞きしました!

目次

1.年に一度のお茶の祭典!宇治茶まつりってどんなまつり?

宇治茶まつりの儀式の画像

宇治茶まつりとは、日本有数の茶どころ・京都府宇治市で、毎年10月の第1日曜日に開催されるおまつりです。

宇治茶まつりが始まったきっかけは、日本茶にまつわる3人の偉人に関係があります。中国から日本に初めて茶種を持ち帰り、栽培を奨励した栄西(えいさい/ようさい)禅師、それを譲り受け、宇治に茶園を開いた明恵上人(みょうえしょうにん)、そして茶道の始祖・千利休(せんのりきゅう)という3人の茶祖です。この3人への報恩感謝とともに、茶業功労者の遺徳をたたえ、宇治茶の更なる発展を祈願するために、宇治茶まつりは昭和8年(1933)に始まりました。

宇治茶まつりの舞台となるのは、世界遺産・宇治上(うじかみ)神社や興聖寺(こうしょうじ)などの神社仏閣がたたずむ、風光明媚な宇治川のほとりです。

宇治茶まつりでは、お茶にまつわるいくつかの儀式が行なわれます。

・興聖寺での「茶壺口切(ちゃつぼくちきり)の儀」と「御献茶式」、「茶筅塚(ちゃせんづか)供養」

・宇治橋三(さん)の間(ま)から川の水を汲(く)む「名水汲上げの儀」

・名水を興聖寺まで運ぶ「名水行列」

・興聖寺での「茶壺口切(ちゃつぼくちきり)の儀」と「御献茶式」、「茶筅塚(ちゃせんづか)供養」

古式ゆかしいまつりは見どころ満載です。お茶席や点心席、宇治茶飲みくらべなどの催しもあり、お茶づくしの1日が楽しめます。

宇治茶まつり概要

【日時】
毎年10月第1日曜日
9:00〜15:00頃

【場所】
9:00  名水汲上げの儀/宇治橋三の間
10:00 茶壺口切の儀・御献茶式/興聖寺 本堂
11:30 茶筅塚供養/興聖寺 門前

【その他の催し】
お茶席…興聖寺・京都府茶業会館・宇治上神社
点心席…宇治上神社 社務所
宇治茶飲みくらべ…興聖寺  など
※内容は年によって異なる場合があります。


*ほかにも宇治川畔一帯でさまざまなイベントを開催。
*お茶席などのイベントには有料のチケットが必要です。
*詳しくは以下までお問合せください。

宇治商工会議所 【電話】0774-23-3101
宇治市観光協会【電話】0774-23-3334

2.宇治茶まつりに携わる3人の想いとは

茶業功労者への感謝と宇治茶隆盛の願いが詰まった宇治茶まつりを支える3名の方に、まつりへの想いを伺いました。

❶宇治川の名水を汲み上げる!通円祐介さん・山根望さん

通円さんと山根さんの画像

ともにお茶を飲みながら、宇治茶まつりの思い出やまつりの未来について語り合う山根さん(左)と通円さん(右)。宇治茶の更なる発展に尽力する同志でもある。

  

宇治茶まつりは、「名水汲上げの儀」という儀式から始まります。これは、昔から名水とされる宇治川の水を豊臣秀吉が汲んで茶会を開いたという故事にちなんだ儀式です。まずは、この儀式の担い手にお話をお聞きしました。

2023年に名水汲上げの儀を担当した東宇治茶業青年団の山根望(やまねのぞむ)さんは、「三の間から何メートルも下の水面まで、縄につるした釣瓶(つるべ)を下ろして水を汲み上げます。多くの見物客に見守られ、とても緊張しました」と話します。急流に向かって身を乗り出す上、橋は車が通ると揺れるので、怖さもあったそうです。

過去に同じ儀式を担当した宇治市観光協会理事の通円祐介(つうえんゆうすけ)さんは、「川の上流に向かって釣瓶を下ろすので、釣瓶が橋の下側に入り込んで目視できないんです。だから『今水が入ったな』という手応えをうまく感じながら上げないと、空っぽで引き上げてしまうこともあるんですよ」と教えてくれました。

「前日に何度か練習したのですが、本番では水を入れすぎてしまい、重くて持ち上げるのが大変でしたね」と、当日を振り返る山根さん。水を満杯に入れると、重さは約10キロにもなるのだとか。その大変さがうかがえます。

宇治市には茶業青年団が3つあり、宇治茶まつりでは各団が毎年交替で、名水汲上げの儀、名水行列、茶壺口切の儀を担当します。普段は主にお茶の鑑定技術の勉強や普及活動に尽力している青年団にとって、茶祖への感謝を捧げる宇治茶まつりは特別。参加できるのは限られた人だけで、その1人に選ばれるのは光栄なことなのだといいます。

「団員としての集大成であり、名誉ある仕事です。だから実際に装束に袖を通したときは身が引き締まる思いがしました。この大切な伝統を次の世代にもしっかり継承していきたいです」と山根さん。通円さんも「感謝の祈りだけでなく、歴史と文化も伝えるまつりとして、将来も100回、200回と続いていってほしいと願います」と熱い胸の内を語ってくれました。

宇治橋の三の間での名水の儀の画像

宇治橋の三の間は上流に向かって張り出した部分。名水汲上げの儀ではここから釣瓶を下ろして水を汲み上げたあと、宇治神社の宮司により5つの竹筒に水が移される。赤い装束を着ているのが山根さん。

宇治橋周辺を練り歩く画像

名水は時代装束の行列とともに宇治橋周辺を練り歩き、興聖寺に運ばれる。

通円さんの家に伝わる千利休作の釣瓶の画像

通円さんの家に伝わる千利休作の釣瓶。現在儀式に使われるのはこの複製品。

❷茶筅に感謝を捧げる僧侶 鈴木泰道さん

話をする鈴木さんの画像

やさしい声色で話す鈴木さん。背後の庭園には宇治川から水を引いた池があり、縁側に腰をかければ、水音や自然の声が心を解きほぐしてくれる。

宇治茶まつりの儀式を締めくくるのが、興聖寺山門前で行なわれる厳かな「茶筅塚供養」です。その担い手の1人、興聖寺の講師・鈴木泰道(すずきたいどう)さんが、儀式について教えてくださいました。

「茶筅塚の前で住職を筆頭に読経を捧げ、その間に参列者の方々が焼香をして、1年間使った茶筅を火にくべていきます」と鈴木さん。茶道具を燃やす光景は一見すると驚くかもしれませんが、この儀式には感謝の念が強くあると鈴木さんはいいます。

「お焚き上げは供養の一つの形であり、形あったものが灰になるのは最後まで使い切った証でもあります。茶筅への感謝とともに『これからもお茶のお稽古に精進しよう』と気持ちを新たにします」

命なきものへ感謝を捧げる姿勢には、禅の心がうかがえます。感情(命)を持たないものも感情を持つものと同等に扱うのが日本仏教。特に禅宗には、感情や言葉を持たない柱や灯籠などから教えを受けることがあるとする“無情説法(むじょうせっぽう)”という考え方があります。

「声なきものの言葉に耳を傾ける謙虚な姿勢が禅の心。その心が、茶筅を大切に扱い供養するという形に表れているのです」と鈴木さんは話します。

茶筅と、先達への感謝、そして茶業界のさらなる発展を胸に祈りを捧げる鈴木さん。茶まつりを宇治という地で行なうことはとても意義深いと考えています。

「宇治茶を育んできた宇治には、この土地にしかないエネルギーがあり、地面や川、山、建物、すべてが揃って宇治茶をつくり出しているのです。仮に茶樹を別の地に植えたとしても、同じものにはならないでしょう」と鈴木さん。

「宇治という土地を守り、宇治茶を未来へ繋げていく。宇治茶まつりはその覚悟を新たにし、共有し直す機会であると考えています」

携わる人々の想いとともに、宇治茶まつりはこれからも続いていくでしょう。

たたずむ茶筅塚の画像

琴坂を抜け、山門の前を左に進んだ先にたたずむ茶筅塚。

茶筅塚供養で焼香をして茶筅を火にくべている画像

茶筅塚供養では、住職らの読経が響く中、参列者が順番に焼香をして茶筅を火にくべていく。

三方(三宝)に積み上げられた茶筅の画像

塚のそばには三方(三宝)に積み上げられた茶筅が見える。塚右手の地面に開けられた穴で火をおこし、茶筅を焚き上げる。

3.まとめ

宇治茶まつりとは、栄西、明恵上人、千利休という3人の茶祖や茶業功労者への報恩感謝と宇治茶の更なる発展を願い、宇治市の宇治川一帯で毎年10月に行なわれるおまつりです。

宇治茶まつりでは名水汲上げの儀、名水行列、茶壺口切の儀、御献茶式、茶筅塚供養という儀式や、お茶席、宇治茶飲みくらべなどのイベントが催されます。また、宇治茶まつりに携わる3人の胸には、宇治茶を大切にし、宇治茶まつりを未来へ繋げていこうという熱い想いがありました。

宇治茶にまつわる内容満載のお茶の祭典・宇治茶まつりに、ぜひ宇治市観光も兼ねて参加してみてはいかがでしょうか。


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