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若者の日本茶離れに反論!20代の茶人を虜にする古くて新しいお茶とは?

2023.10.01

 
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最近よく耳にする若者の日本茶離れ。ですが街に出るとカフェやスタンドがあったりマイボトルを持参したりする若い人の姿を見かけます。実は流行に敏感な若い人たちは、玉露や抹茶など、古くて新しいお茶の魅力に気づいているのです。

平均28歳、関西を中心に活躍する若き茶人たちに日本茶の魅力について語ってもらいました。

円卓でお茶を楽しむ3人の写真

目次

御茶村さん

日本茶YouTuber 御茶村(おちゃむら)さん

兵庫県生まれ。2016年に農林水産省へ入省。同省公式YouTube「BUZZ MAFF」で日本茶の魅力を発信する「日本茶チャンネル」を企画。2021年に農林水産省を退職後、京都に拠点を移し、「御茶村」名義でお茶の振興活動をしている。

迫琢磨さん

日本茶マガジン編集長 迫 琢磨(さこ たくま)さん

宇治市生まれ。大学在学中より茶農家、お茶屋で修行を積み、巌丸茶園合同会社を設立。日本茶マガジン『CiteaBoy』の編集長。シティポップと日本茶を融合させたデザインで、若い世代にお茶の魅力を発信している。高校まではサッカーに打ち込んでいたスポーツマン。

三窪笑り子さん

茶道講師 三窪 笑り子(みくぼ えりこ)さん

大阪・堺市生まれ。裏千家学園茶道専門学校を卒業。さかい利晶の杜の立ち上げに参加。2017年より京都市北区の陶々舎に拠点を置き、茶道教室の運営や茶会などに携わるほか、国内外で茶と人を結ぶ活動を行なっている。株式会社Tea Room所属。Tea Knot 代表。

1.お茶一色の人生!そのきっかけは些細なこと?

御茶村さん,迫琢磨さん,三窪笑り子さん

この日、京町家に集まった3人の若者は、関西を中心に活動をしている茶人たち。日本茶の魅力をSNSやお茶会など、さまざまな形で発信しています。

そんな日本茶に魅了された若い3人に、自身がお茶に惹かれたきっかけについて伺いました。すると意外とそのきっかけは些細なことでした。お茶との出合いについて伺いました。

御茶村)私は2021年に農林水産省を退職して京都に戻り、大徳寺さんなどでお茶の修行中です。主に、SNSやYouTubeで情報発信をしています。

お茶が好きになったきっかけは中学生のとき。海外でホームステイする機会があったんですが、そこで自分は日本の文化のことを何も知らないことに気づきまして、帰国後に軽い気持ちで高校の茶道部に入ったら、どっぷり浸かってしまいました。

大学では、宇治茶同好会というサークルで活動していました。学部での研究もお茶の木について。農林水産省時代はお茶の普及活動をしたり全国の茶農家さんに出会ったりと、気がつけばお茶一色の人生ですね。

迫)お茶を好きになるきっかけって本当に些細なことですよね。

私は大学生の頃、ふらっと立ち寄った京田辺市のお茶屋さんで秘蔵の玉露をいただいたんです。そのあまりのおいしさに「なんだこれは!」と驚いたのを今でも鮮明に覚えています。こんなに素晴らしいものがあることをもっとたくさんの人に、特に自分よりも若い世代に伝えなくては! といてもたってもいられなくなったんです。

それで『CiteaBoy』という雑誌をクラウドファンディングで制作して若い層に届けています。

三窪)私のきっかけは友人のおばあちゃんのお友達が茶道の先生で、9歳のときに、お茶もお菓子もおいしいからと気軽に習いはじめたら、ここまで来ていたという感じです。

そのときの先生がお茶に対する興味の幅の広い方で、抹茶だけでなく煎茶や中国茶など、さまざまなお茶の世界を柔軟に見せてくださったんです。今の自分の活動スタイルにも大きく影響しています。

だから、茶道の文化や所作など、お茶の奥深いところはもちろん素晴らしいんですが、まずはそんな堅苦しくないところを入り口に「お茶=楽しいもの」と知ってほしいです。

2.デジタルデトックスにも! お茶は古くて新しい飲み物!

お茶を囲んで話す御茶村さん,迫琢磨さん,三窪笑り子さん

最近はさまざまものが「若者離れ」していると言われる時代。お茶も例外ではありません。

ただ、その一方で3人のようにお茶に魅了される若者がいるのも事実。デジタルな世間に対してアナログなお茶をすすめる理由を聞きました。

迫)私は自分よりもさらに若い世代、お茶にあまり馴染みのない世代にも、コーヒーのようにラフに楽しんでほしいなと思い、『CiteaBoy』という雑誌をあえて直接手に届く形にしました。

御茶村)定期的に紙の雑誌とお茶が届くというアナログな方法が、目まぐるしいデジタル時代の中でかえって新しいですよね。

三窪)今や日常生活にスマホは手放せませんが、すぐに情報にアクセスできる便利な反面、気が散りがちな時代です。アナログな視点って大事だと思います。お茶はそうしたアナログな視点に帰らせてくれる、とてもよいものですよね。

御茶村)デジタルデトックスにもなりますよね。日本で古くから育まれ、洗練され、こうして生活に結びついた文化であることをもっと伝えていきたいですね。

迫)はい。お茶って実は古くて新しい、かっこいい飲み物なんだ! ということを広めていきたいですね。これからもっと楽しいことを一緒にやっていきましょう

3.10年後の日本茶はもっと手軽に、可能性だらけ!

縁側に腰掛ける御茶村さん,迫琢磨さん,三窪笑り子さん

10年後の日本茶はどんな風に楽しまれているのでしょうか。日本茶に魅せられた彼らに、3人の活動の展望とともに、未来のお茶のあり方やその可能性についてうかがいました。

御茶村)10年後の未来では、例えばインスタント感覚で抹茶を楽しめるようになっている、カフェのメニューにコーヒーと同じように当たり前に日本茶が並んでいる。そんな時代になっているんじゃないでしょうか。

迫)手軽な飲み物として、もっとカジュアルに楽しまれていそうですね。私は大阪府・豊中市の商店街で、お茶スタンドを開く計画を今立てています。

お茶を実際に「飲む」場をつくることで、リアルにお茶を楽しんでもらえたらと考えています。お茶のおいしさはもちろん、場をつくることで、心揺さぶられるような楽しい体験を提供したいです。

三窪)最近よく見かけるようになったコーヒースタンドみたいですね。「ちょっと立ち寄ってみようかな」と思えるような場は、これから必要だと思います。

御茶村)昔は全国各地に「町のお茶屋さん」があって、地域の交流の場にもなっていましたね。迫さんの試みは、お茶の原点に立ち返って、人の縁をつなぐ場になっていくのが想像できます。

4.お茶は人と人をつなぐコミュニケーションツール

談笑する御茶村さん,迫琢磨さん,三窪笑り子さん

京都や大阪を中心に活動するみなさん、実は共通の知り合いやコミュニティが多くあることが発覚。人と人をつなぐのもまたお茶だと教えてくれました。

御茶村)文化が発展するためには、多くの人にアンテナが必要だと思うんです。まず心を揺さぶって、人の心にお茶のアンテナを立てて、そこからさまざまなお茶の魅力に気づいてもらうところから、10年後の未来につなげていきたいですね。

三窪)実は、私の主宰する茶道教室は、コロナ禍の前より入門者が増え、茶道に興味を持っている方が増えたことを如実に感じました。

みなさん、人とリアルに触れ合う機会というか、口実を求める方が多かったんじゃないかと思います。 「なんだか楽しそうだな」というのをきっかけにご縁が広がって、お茶の奥深さに気づいてくださっているようです。

迫)お茶の魅力にまだ気づいていない人も、人が楽しそうにしていると「お茶ってなんだか楽しそう」と興味を持ちますよね。

三窪)ちょっと面倒に思われるかもしれませんけれど、お茶の時間って一旦気持ちをリセットして自分と向き合せてくれますよね。一日に一回でも、一瞬だけでもよいので意識的にお茶と向き合う時間をつくると、それだけで自分が整います。

また、人と人の縁を結ぶものでもありますね。お茶を楽しむ場は「気」の交換をする場だなと思います。

迫)現代人は忙しい人が多いです。そういう人ほど、ちょっと立ち止まってお茶を楽しんでほしいです。

御茶村)お茶と向き合う時間をつくると、心が潤いますね。お茶は喉の渇きを潤すただの飲み物ではなく、人と文化の結び役だと思います。

三窪)きっとお茶を楽しんでいる人の周りには自然と人が集まってくるんだと思います。お茶にはそんな力がありますし、十年後はもっとお茶を通したコミュニティが増えているんじゃないかなと思います。

5.若き茶人たちのお茶の楽しみ方

日本茶の振興活動に邁進する3人。そんな彼らが日頃から好んで飲んでいるお茶は何なのか、愛用している茶器とその出合いとともに教えてもらいました。

元官僚の日本茶YouTuber 御茶村さんの場合

急須で若蒸し茶を淹れる御茶村さん

尾道の骨董屋で買い求めた急須は、小ぶりな佇まいだが手によくなじむのだとか。湯呑は頂き物。

御茶村)私は最近、若蒸し茶にハマっています。さっぱりしていて、普段の暮らしに取り入れやすいんですよね。全国各地にはいろいろな種類の若蒸し茶があって、バラエティに富んでいます。その味わいの違いをわかるようになりたいなと思っています。

愛用している急須は、昨年の夏に友人たちと出かけた広島県の尾道市にある骨董屋さんで求めたものです。偶然見かけたものなのですが、惚れ込んで購入しました。華奢に見えますが、壺のような形のおかげか、意外とたっぷり入るんですよ。

今のお茶の目標は茶事をこなすこと。お料理、お酒も含めたお茶会のトータルなおもてなしの究極の形を目指して、目下勉強中です。

シティポップ日本茶マガジン編集長 迫さんの場合

宝瓶で玉露を淹れる迫さん

玉露を手軽に淹れられる宝瓶は、清水焼の白井弘樹さんの作。忙しい毎日に心強い逸品だとか。

迫)一人でゆっくりお茶を楽しみたいときは玉露ですね。玉露を飲むたびに、お茶に魅せられたきっかけの「こんなおいしいものがあるなんて」と感じたあの衝撃を思い出し、自分の原点に返るような気持ちになります。それと同時にインパクトのある味が気に入っています。

玉露を淹れるときによく使う茶器は、清水焼の宝瓶です。これがとても便利で、蓋で茶葉を掬ったり、蓋と内側の溝でお茶を濾したりと手軽に扱えるので気に入っています。

こうした便利な茶道具があることも含めて発信していきたいです。

国内外で活躍する茶道教室主宰 三窪さんの場合

抹茶碗で抹茶を点てる三窪さん

縁があって受け継いだ抹茶碗は、お正月の賑やかな雰囲気が伝わってくる。

三窪)私はやはりお抹茶が好きですね。お道具やしつらえとともに楽しめる奥深さが何より魅力です。めまぐるしい時代、お抹茶を点てているときは自分と向き合う時間、そう意識することで気持ちを整えられます。

私が今日持ってきた抹茶碗は、七宝の柄と梅がおめでたい雰囲気で、お正月に合うかなと思って選びました。千家十職の一つの永楽家の十六代・永楽即全さんの作なのですが、お世話になった方から「あなたはこれからお茶を続けていくだろうから」と受け継ぎました。お茶を通して人とのご縁を感じます。

6.まとめ

若い世代の日本茶離れを耳にしますが、実態としては古くて新しいお茶の文化を魅力的に感じている若者は多くいます。そのきっかけは意外と些細なことでした。

デジタルなものが当たり前になった今の時代だからこそ、急須で時間をかけていれるアナログな日本茶に若い人は惹かれるのでしょう。10年後の未来、日本茶は今よりもっと身近で、コミュニケーションツールとしての文化に発展してるかもしません。

日本茶の未来を担う彼らの活躍に今後も目が離せません。


  

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