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【8月の夜の京都観光】夏の風物詩、火にまつわる神事の裏側に迫る!
2026.08.01

夏の京都で大切にされている風物詩に、五山送り火と松上げがあります。どちらも8月に行なわれる、火にまつわる年中行事です。歴史ある神事の裏側には、伝統を守るために尽力する保存会の人たちの熱い想いと、彼らを支える一服のお茶がありました。
1.火にまつわる京の夏の伝統行事って?
京都では毎年8月に、火にまつわる伝統行事が行なわれます。「京都五山送り火」と「松上げ」、2つの行事をご紹介します。
京都五山送り火

夏の京都の風物詩「京都五山送り火」では、毎年8月16日の夜8時から、東山の「大文字」から順番に約5分の間隔をあけて、「妙法」、「船形」、「左大文字」、「鳥居形」と京都市内の5ヵ所の山に点火されます。お盆にお迎えしたご先祖様の霊(お精霊さん)が、迷わずあの世へ戻るための道しるべと伝えられています。5つの保存会が継承する、京都に根付いた年中行事です。
松上げ

高さ20メートルの灯籠木(とろぎ)の上に松明(たいまつ)を投げる火祭りが「松上げ」です。京都から若狭街道の山間部で行なわれ、愛宕(あたご)山に祀られる火伏せの神様・迦具槌命(かぐつちのみこと)を信仰する「愛宕信仰」に由来します。火除けを願うとともに、ご先祖様の霊を送るお盆行事も兼ねています。京都では花脊(はなせ)、広河原(ひろがわら)、久多(くた)で行なわれており、日程は地域ごとに異なりますが、8月15日または23日に開催される、火が飛び交う熱気溢れる神事です。
2.【京都五山送り火】「妙法」を守る松ヶ崎立正会

松ヶ崎立正会の理事長・岩﨑勉さんは、2025年度は京都五山送り火連合会の会長も兼任していた。
「よく、『6つの山があるのに五山なの?』と聞かれることがありますが、妙と法は2文字が一対なのです」と教えてくれたのは、五山送り火の「妙法」を担う松ヶ崎立正会(まつがさきりっしょうかい)の理事長・岩﨑勉さんです。「妙法」の保存継承には、松ヶ崎の地元住民と、奉仕一団体を含む73戸が携わっています。
「妙法」とは、法華(ほっけ)経で唱えるお題目「南無妙法蓮華経」に由来します。鎌倉時代に日蓮の孫弟子・日像(にちぞう)が布教に努め、村民の改宗の証に西山に「妙」の字を書いたとされ、「法」の字は約300年後に書かれたと伝わります。
「妙の字が草書体なのに対し、法の字が隷書体(れいしょたい)なことからも、始めた時代が異なると推察されています」と岩﨑さんは話します。
そんな歴史ある「妙法」は、8月16日の夜8時5分、2つの字へ同時に火が点されます。点火の合図を出すのは岩﨑さんの役目です。両山を見られる高台から合図を送ると、山側の役員たちが「点火!点火!」と連呼し、アカマツ割木組みの火床に火を点けます。そうするとたちまち炎が燃え上がり、火床はサウナさながらの暑さになると言います。こうした保存会の方々の努力のおかげで、闇夜に大切な2文字が浮かび上がるのです。
「元々、村衆の結束力によって継承されてきました。これからも地域の人たちとともに伝統を守っていきたいです」
そんな岩﨑さんを支えるのは、1日の終わりにいただくリラックスタイムの緑茶です。以前はお酒だったけれど、健康のためにお茶も取り入れたそうです。理事長である岩﨑さんは、たくさんの会合に参加しますが、そこでのあたたかいお茶が楽しみだと言います。
「人が集まるところにはお茶があります。出向いて来てくれた人への心遣いですね、大切にしたいです」夏の終わりを告げる送り火は、地域の人たちの伝統を守る想いで継承されてきたのです。

「妙」の字は103基、「法」は63基の点火したアカマツ割木組みの火床による火文字。

岩﨑さんが指すのは「法」の文字。松ヶ崎立正会の建物の屋上から眺めることができる。

16日当日、火床現場で奉仕にあたる保存会の人々の様子。(写真/山中茂)

毎年8月16日の夜8時5分に一斉に点火される「妙」と「法」の文字。雨の日でも執り行なわれる。点火されている間、「妙」では涌泉寺の住職が火床現場で、「法」では妙圓寺の住職が本堂でそれぞれ読経回向される。
3.【花脊の松上げ】伝統の火投げを守る花脊松上げ保存会

灯籠木場にて。八桝町の町章をモチーフにした、保存会の法被と手拭いをした仲井さん。
京都駅から車で約1時間半、杉の木林を抜けた先にあるのが花脊八桝(はなせやます)町です。この地で毎年、8月15日の夜に行なわれるのが「花脊の松上げ」と呼ばれる火の神事です。
「かつては8月23日の愛宕神社のお祭りの日に行なっていましたが、町の高齢化や過疎化が進むにつれて、帰省の多いお盆に合せた今の日付に変わっていきました」と教えてくれたのは、花脊松上げ保存会の仲井友治さんです。現在も地域の人や出身者が帰省して約40名が奉仕に当たっています。
仲井さんも出身は八桝町です。男衆による火の祭りに子どもの頃より憧れ、中学生で初めて奉仕してから約50年以上、ずっと携わっています。
松上げの準備は、担い手各自で行ないます。例えば松明の一種である「上げ松」は、当日約20メートルの灯籠木の先に設置した籠へ投げ入れる手持ちの松明ですが、担い手たちが投げやすいようにヒノキの材木を割って束ね、藁で編んだ紐をつけてつくります。
その手製の松明を手に、15日の夜、男たちが灯籠木場に集まります。鐘や太鼓が鳴り響く中、灯籠木の籠に向かって火の点いた上げ松が四方八方から放られていきます。炎の放物線がつくり出す光景は圧巻です!
「当日は熱さも忘れて真剣ですが、火を扱う行事なので暑いですよ」と仲井さんは言います。水分補給としても、お茶は欠かせません。日頃から朝昼晩と休憩時間に、緑茶やほうじ茶を好んで飲んでいるそうです。
「お茶も松上げの準備も同じですね、日常の中にある大切な習慣です。時代に合う形でこれからも守っていきたいです」と仲井さんは言います。というのも、松上げの準備には林業の知識が必要です。昔は薪割りが日常的に行なわれて、「この材木は燃えやすい、割り方は細かいほうがよい」など山間部では共通の認識でしたが、時代の変化や保存会の高齢化で材料の確保も厳しいのが現状です。それでも町民以外にも協力を呼びかけたりクレーン車を使ったりするなど「今の時代に合う様式で次世代に繋げていきたい」と真剣な表情で話してくれました。京都の風物詩は、暑さに負けない人々の想いで受け継がれていきます。

松上げに使用する2種類の松明。これに火を点けて神事を執り行なう。

当日の様子。町内の愛宕社から聖なる火を松明に灯して火を運ぶ保存会の面々。

花脊の松上げ。大木の灯籠木に向かって幻想的な放物線を描く。
4.まとめ
京都の夏を彩る「五山送り火」の「妙法」と「花脊の松上げ」の裏側には、伝統を守り、次世代に繋げるために尽力する保存会の人々の姿がありました。そしてお話を聞いたお2人のそばには、お茶があります。歴史ある行事を守る人々に思いを馳せながら、京都の夏の夜の風物詩をお楽しみください。
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