京都の人気店に聞いた!お茶に合う料理がおいしくて感動
2023.05.01
日本茶とお菓子の相性はよく聞きますが、実は日本茶と魚料理もとても合うんです! そんなお茶に合う料理を教えてくれたのは、ニューヨーク・ブルックリンにある「OKONOMI」の姉妹店で、京都に店を構える人気店「ロリマー京都」店長の井上誠さん。
京都で生まれ育ち、小さい頃からお茶が身近にあったお茶好きの井上さんに、お茶と合せて食べたいおすすめの魚料理を教えていただきました。
目次
教えてくれる人
ロリマー京都 店長 井上誠さん
「たとえば、アボカドを使ったお寿司のカリフォルニアロールは、僕らからみたら洋食のようなものですが、海外の人からみたら、間違いなくwashokuですよね。そういう感覚の味を提供したいと思っています」と井上さん。
その自由な発想を支えるのが、かつおと昆布で丁寧にだしを引く、魚の下ごしらえをきちんとするといった日本料理の基本。そしてもう一つがお茶。日本の食文化を育みあってきた日本茶こそ、魚料理をよりおいしくしてくれるのだといいます。
1.自宅でお茶のペアリングを楽しむ方法
初めに、自宅でお茶に合う料理を見つけるポイントについて井上さんに教えてもらいました。
「ご家庭で楽しむときは、皆さんの自由な感覚やその日の気分を大切にして、あまり理屈にとらわれず、いろいろな味の出合いを探ってみてほしいです。食事中におかずに合せてお茶をいろいろ変える“おうちでお茶のペアリング”もぜひ楽しんでみてください。コツは急須で丁寧にお茶を淹れること。これだけでもお茶の新たなおいしさにきっと出合えると思います」
玉露、煎茶、玄米茶、ほうじ茶など、お茶にはそれぞれ個性がありますが、井上さんがその特長をうまく組合せたペアリングは、なかなか個性的。その発想のもとは「自由に楽しむこと」なのだそうです。
2.お茶に合う食べ物は、ズバリ「魚」!
「お茶に合う食べ物は、ズバリ「魚」です。魚には独特の風味や匂い、クセがありますが、それらをプラス方向に変える力がお茶にはあります。双方の持ち味を活かしながら、さらなる旨みや魅力を引き出したいと思います」と井上さん。
京都府の中丹地域に位置する舞鶴直送の新鮮魚介を中心に、たっぷりの野菜とともに井上さんが組み立てるメニューはとてもヘルシー。ちょっと珍しいのが、魚の仕込み法です。なんとフルーツやハーブをふんだんに使って、おろした魚を塩水や醤油とともに漬け込むのです。さらに、刺身にオレンジやライムを挟んだり、玄米茶で魚の切り身を包んで香ばしく焼くことも……! これまでの発想ではなかなかたどり着けない新しいwashokuの世界が広がります。
3.見た目も味もうるわしい、お茶に合う料理4選
魚料理に長けた井上さんに、4種のお茶と相性抜群の料理を教えてもらいました。さぁ、どんな魚料理とのペアリングが登場するのでしょうか。
その1:かきのオイル漬けと煎茶
「個性と個性をあえてぶつけて、エッジが効いた出合いを演出しました」
「かきのオイル漬けと煎茶」は、強い個性の持ち主同士を中和させるのではなく、あえてぶつけてみることで、主役が二人いるような、煎茶の爽やかさが際立つ、緊張感のあるペアリングです。
新鮮なかきをニンニクで香り付けしながらオリーブオイルでソテーして、ハーブのタラゴンとともにオイル漬けにした一品は、潮の香りが濃厚で、かきのエキスがしっかりと感じられます。オイルに漬けることで、さらにその風味が強くなり、個性的な味わいが生まれてきます。タラゴンはハーブの中で、力強い香りと青みが特長です。
ペアリングしたのは若蒸しの煎茶。若々しくて青み(青々しさ)の強い煎茶で、こちらもなかなか個性的な味わいです。
濃厚な海の味やオイルを、煎茶がさっぱりと洗い流して、後味もすっきり。食欲も刺激されて、また思わず手が伸びる……、そんなおいしいサイクルが生まれそうですね。
その2:鯛のカルパッチョと玄米茶
「軽やかな味の重なりに、玄米茶の香ばしさをアクセントとして足しました」
「鯛のカルパッチョと玄米茶」は、軽やかなもの同士のペアリングです。
玄米茶は強すぎず、濃すぎず、軽やかな香りと味わいがあり、同じく軽やかなカルパッチョとそもそもが相性よしです。
生のズッキーニを極薄にスライスして、鯛の薄造りと合せてカルパッチョに仕立てました。味付けはオリーブオイルと塩だけ。白ワインにもよく合う一皿に、玄米茶を組合せてみました。
ズッキーニはよく火入れをして食べますが、生もまたおいしいんですよ。ほのかな甘みがあって、食感も心地よく、鯛の上品な旨みとよくマッチします。
2つの素材をオリーブオイルがまろやかに包み込んで、そこに、玄米茶の香ばしさをプラス。飲み飽きしないお茶と、淡白なカルパッチョが最高の相性をみせてくれます。今回はズッキーニを使いましたが、春ならば菜の花をサッとボイルしたものや、大根の薄切りなどを合せてもいいですね。
その3:刺身の盛り合せと玉露
「粋と洗練の見事な融合。何もいうことはなし! の組合せです」
「刺身の盛り合せと玉露」は、互いにとても存在感のある力強いペアリングです。
皮目を焼き、霜降りにした鯛とレモン、アジとライム、そしてホウボウとオレンジを互いに挟んで、見た目も華やかに刺身を盛り付けてみました。
ほのかな柑橘の香りがそれぞれ爽やかに立ちのぼって、魚介をさらに上品な味わいへと導いてくれます。わさび醤油もおいしいのですが、まわりに振った岩塩でいただくのもおすすめです。
刺身に合せたのはふっくらとまろやかな風味の玉露です。じっくりと丁寧に淹れた玉露は、濃厚な旨みが凝縮されて、いつまでも余韻を楽しめる、いわずと知れたお茶の中の王道でしょう。
刺身もまた和食文化の王道といえるもので、互いにとても存在感のある力強い組合せといえます。でも、ただ個性がぶつかるのではなく、和食文化の歴史の中で洗練を極めた味わい同士なので、人があまり手をかけずとも、自ずと見事な融合をみせてくれます。力あるものの凄さを実感するペアリングといえるでしょう。
その4:一汁三菜とほうじ茶
「多彩な味に絶妙に寄り添う万能選手。ほうじ茶の魅力を堪能してください」
「一汁三菜とほうじ茶」は、ほうじ茶の包容力をいかしたペアリングです。
うちの店の定番といえば、一汁三菜のお膳。焼き魚と三種のお惣菜、それにごはんと味噌汁がついて、朝ごはんに人気です。
今日の焼き魚はスズキ。グレープフルーツとローズマリーとともに塩水に漬けた魚をこんがりと焼きました。お惣菜は10種近くの旬の野菜をディルとゆず果汁で漬け込んだオリジナルの浅漬け、牛乳と蜂蜜を混ぜてやわらかく蒸し焼きにした玉子焼き、そして菜の花のおひたしとクリームチーズの3種。このような多彩な味わいに添えるのは、ほうじ茶がベストでしょう。
とくに焼き目が香ばしいスズキとほうじ茶の芳香は素晴らしい相性です。でも、この豊かな芳香が食材を邪魔することはなく、さまざまな料理をまとめあげる力を秘めていながら、一歩引いたような奥ゆかしさがあって、そこが日本人に好まれる所以だと思います。和食だからこそ、真価を発揮するほうじ茶の魅力をじっくり味わいたいものです。
ロリマー京都
【住所】京都市下京区橋詰町143
【電話】075-366-5787
【営業時間】平日8:00~16:00、土日祝7:30~16:00(ともにL.O.15:30)
【定休日】無休
4.まとめ
煎茶、玄米茶、玉露、ほうじ茶……、4種のお茶に合う料理をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。意外と思われる組み合せもあったかもしれませんが、どれもこれもとっても合っておすすめです! ぜひみなさまもご自宅で試してみてください。