【京料理人のおもてなしコラム・お盆編】親族でお蕎麦と天婦羅を囲む
2026.08.01

現代の名工・京料理人の松下秀夫先生に、お盆の京料理のおもてなしについてお話をお聞きしました。お盆は里帰りして親族が集まるときです。久しぶりに会う兄弟姉妹のために、松下先生は料理にどんな思いを込めるのでしょうか。そのこころに迫ります。
教えてくれた人
京料理人 松下秀夫(まつしたひでお)先生

京都の老舗懐石料理店「ちもと」にて勤務後、学校法人大和学園において京料理人教師として活躍。令和3年度「京都府の現代の名工」に選ばれる。
1.兄弟姉妹が元気に集う、お盆の里帰り

お盆は、日本で古くから受け継がれてきた夏の伝統行事で、ご先祖様の霊をお迎えし、感謝の気持ちを伝えて供養する期間です。地域によって時期は異なりますが、多くの地域では8月13日から16日頃に行われます。
この時期には、お墓参りをしたり、お仏壇にお供えをしたりして、ご先祖様を偲びます。また、お盆は家族や親族が久しぶりに集まる大切な機会でもあります。離れて暮らす子どもや孫が帰省し、一緒に食事を囲んだり、近況を報告し合ったりと、親族の絆を深める時間としても大事にされてきました。
その大切なお盆に、親族をもてなす献立を、京料理人の松下先生が考えます。
「お盆休みは毎年、京都郊外の実家に兄弟姉妹が集まるのが恒例になっています。今回は私が腕をふるいたいと思います。真夏のこの時期は暑さが厳しいので、さっぱりとした涼感のある、のど越しのよいざる蕎麦をしつらえましょう。いわゆる京料理ではありませんが、年配者もいますから、みんなが食べやすい料理にします。そして蕎麦には、京料理の基本となる薄味仕立ての天婦羅や煮物を添えて点心風にして、京料理の味わいを楽しんでもらいたいですね」
こうして松下先生がお盆の集まりに親族をもてなす献立は、ざる蕎麦と天婦羅点心に決まりました。
2.京料理人がおもてなしの思いを込めたお盆の一皿とは?
【蕎麦打ちから始めるざる蕎麦】

まず1品目はざる蕎麦です。ざる蕎麦は蕎麦打ちから始めます。蕎麦粉と小麦粉を8対2で混ぜて練り、綿棒で薄くのばし、極細に切っていきます。「細切りは涼感がありますからね。また蕎麦は歯ごたえが命なので、茹ですぎないことです」と大鍋にたっぷりの湯を沸かして蕎麦を入れ、さっと引き上げ冷水につけて締めます。
蕎麦つゆは、前の晩から昆布、まぐろ節、だしじゃこ、椎茸、かんぴょうでだしをとり、醤油と味醂(みりん)だけで味付けし、冷やしておきます。だしの複雑な風味が見事に調和した、京料理人ならではの上品な蕎麦つゆです。
よく冷えた蕎麦はざるに盛って刻み紫蘇をのせ、辛み大根おろしと刻み葱を添えます。さらに具として用意したのが、冷やした刻みモロヘイヤととろろ芋です。「冷たいねばねば食材で変化をつけて食べましょう」。
こうして涼感あるざる蕎麦が仕上がりました。

できたての味は格別なので蕎麦打ちから始めます。蕎麦粉と小麦粉の割合は8対2。粉の半量前後の水と混ぜ合せ、粉っぽさがなくなったらよく練り込みます。
【具だくさん!天婦羅点心】

2品目の具だくさんの天婦羅点心は、揚げ物と煮物などの盛り合せです。「食感、味付け、取り合せ、彩りと、宴を楽しく盛り立てるものにしたいですね」と松下先生は話します。
つくね海老揚げは、海老の天婦羅に見えますが、海老の身をすりつぶし、尾にまきつけて揚げたものです。年配者にも食べやすいようにやわらかい食感に仕上げるという心遣いです。茄子、ゴーヤ、大葉紫蘇も揚げて添えます。
もう1品の凝った料理が金銀玉子です。一見、だし巻き卵のようですが、なんとゆで卵を白身と黄身に分け、白身は刻み、黄身は漉(こ)して合せ酢とともに混ぜ合せ、巻きすで巻いて一晩おいたもので、夏場の日持ちも配慮した京料理の定番です。
夏野菜の煮物は、かぼちゃ、青唐辛子、冬瓜をごく薄味で煮て前の晩から冷やしておきます。一晩おくと野菜から甘味が出て薄味でも深い味わいになるそうです。さらに、食べやすいように極細切りにしたきんぴらごぼうと煮鰊(ににしん)を添えて、色とりどりの点心の一皿ができ上がりました。
3.まとめ
京料理人の松下秀夫先生が、お盆に久しぶりに会う親族に振る舞う献立をご紹介しました。ざる蕎麦は蕎麦を打つところから始めた手間暇かけた1品です。具だくさんの天婦羅点心は、食感、味付け、取り合せ、彩りと、宴を楽しく盛り立てます。どちらも暑い季節や食べる人への配慮に京料理の心を込めた、涼感あふれる御膳です。
器協力:株式会社陶好堂 京都市東山区五条橋東4丁目420
☎075-541-5101 ※器に関するお問合せは直接同店へ。
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