トップ > 075 干支の置物はいつ、どこに飾る?京のしきたり研究家が教える縁起と理由

干支の置物はいつ、どこに飾る?京のしきたり研究家が教える縁起と理由

2023.11.01

干支の置物の画像

十二支の動物をかたどった干支の置物。正月飾りの縁起物のひとつですが、いつから準備するのかご存知ですか。家のどこの場所に飾ればよいのか、処分してもよいの?干支の置物にまつわる疑問を解説。日本人と深いつながりのある十二支の縁起と由来、その理由も合せてご紹介します。

教えてくれる人 岩上 力 先生

岩上力先生の画像

1947年、京都府宇治市生まれ。儀式作法研究家。劇団「新国劇」に在団中から礼法の研究に努め、儀式作法研究会を設立。カルチャーセンターなどで儀式作法教室の講師を務める。京の作法アドバイザー、結納コーディネーターとして、テレビ・ラジオに多数出演。

1.いつ?どこに飾るとよい?意外と知らない干支の置物の理由Q&A

迎春の準備で干支の置物を新調する人もいるでしょう。いつ頃から飾ればよいものなのか。また家のどこに飾るべきなのか。古くなったものは処分してもいいの?そんな干支の飾りの疑問について理由をお教えします。

年末から?お正月に?京都のしきたりは12月13日に準備

12月のカレンダーの画像

干支の置物を飾るのに、具体的に「いつから」「この日に」という日はありません。
京都では12月13日をお正月の準備を始める日とし、「事始め」とします。ただ、現代において13日ではまだ年末の気持ちにはなれませんよね。縁起物である置物は清らかな場所に置くことが大切なので、年末の大掃除を済ませてから飾るようにしましょう。綺麗に掃除してからなら、年内でも新年を迎えてからでもいつ飾ってもよいです。

トイレはNG?干支の置物を飾る場所の決まりは?

干支の置物の画像

ご自宅のどこに干支の置物を飾ればよいのか、それは普段からよく目にする場所がおすすめです。家の顔である玄関や家族が集まるリビングが最適でしょう。ですが、実は置き場所に「ここ」という決まりはありません。ただ、縁起物なので「不浄の場所」とされるトイレは避けましょう。運気が下がると考えられています。

古くなった置物、処分はどうするの?

ゴミのイラストの画像

古くなった干支の置物とはいえ、縁起物を捨てるのは気持ちがひけますよね。処分の方法をご存知ですか。かつては初詣や年末に神社や地域でお火焚きが行なわれていましたが、最近はめっきり見かけません。
干支の置物を処分する際は感謝の気持ちを込めて、水でしっかり洗って清めてから、あとは各市町村のルールにしたがって分別して処分してください。

2.どうして干支の置物を飾るの?干支に込められた理由

そもそもなぜ干支の置物を飾るのでしょうか。十二支の考え方は中国からやってきたものですが、それが日本で独自の意味を持つようになりました。干支の由来についてその理由とともに岩上先生に教えてもらいました。

中国では数字の役割だった!日本で縁起物に変化!

十二支のイラストの画像

十二の動物が割り当てられた干支。元々中国で生まれたものですが、当時は月や日付などの暦を表すためのいわば数字の役割のようなものだったと、京都のしきたりや縁起の由来に詳しい岩上力先生は言います。

日本人は昔から語呂合せや縁起担ぎを重んじてきました。そういった日本人の精神性と干支は相性がよかったのでしょう。いつからかというのは分かっていませんが、干支の考え方が日本に入ってきてから読み方の同じ「子」の字に動物の「ねずみ」を当てはめ、「ねずみは子だくさんなんで子孫繁栄」というように動物の性格と縁起を重ねて考えられるようになったとされます。

目に見えないものを愛でるために「置物」に!

十二支の置物の画像

では何故、干支をかたどった置物を飾るのでしょうか。岩上先生曰く、日本では、古くから目に見えない縁起や願いを、目に見える形にして尊んだり畏れたりして愛でることで大切にしてきたと言います。

例えば、お守りが近いのだとか。初詣や人生の節目で神社に参拝して祈りを捧げますが、その祈願は目には見えません。そこでお守りという形にすることで、目に見えて愛でることができるのです。干支の置物も同じように、家内安全や無病息災の願いを目に見える形・置物にして愛でる意味があります。

日頃から目にすること、愛でることで幸せが訪れると考えられるようになったと言います。
干支の置物はこうした日本人の精神的な思想と結びついたとされます。

3.2024年の干支は辰!その由来と縁起

十二支の中で唯一実在しない動物があてはめられた「辰」。辰に込められた縁起とその由来について解説します。また「辰」という漢字についてもお教えします。

唯一の想像上の動物・元々は「竜巻」だった?

辰の置物の画像

辰は干支で唯一、想像上の動物である「龍」が当てはめられています。
龍は中国では鳳凰・麒麟・蓬莱亀と並んで「四瑞(しずい)」に数えられるめでたい存在です。龍が天上するとよいことが起こるとされる吉祥のシンボルです。
また、「立つ」の語呂合せから出世開運や、穢れ・悪運を「たつ」(祓う)という意味も込められています、と岩上先生は説きます。

そんな龍の起源は諸説ありますが、ひとつに「竜巻」を龍に見立てた説があると岩上先生は言います。
農耕民族である日本人にとって、雨は重要でした。龍は雨を司る神とされ、すさまじい竜巻を見て『龍が天上した』と考えたのでしょう。そのすさまじい威力は、畏れると同時に神格化され崇められてきました。自然現象の恐怖と恵みに神の二面性を見立てているというのです。

とっても縁起のよい漢字「辰」

辰の字の画像

干支の「辰」という漢字は、大変縁起のよい字です。大和字と呼ばれる日本由来の漢字で『世の中にあるものがすべてよくなる』という意味が込められています。

現在でも婚礼などのお祝いの際に目録に「めでたい日」という意味で「吉日(きちじつ)」と書くかと思いますが、かつては「吉辰(きっしん)」とも書いていました。それほどまでに辰という字は縁起のよい漢字なのです。

4.まとめ

お正月飾りのひとつ・干支の置物。十二支の動物をかたどった縁起物です。飾る時期や場所ついては具体的なルールはありません。大掃除で場所を清めてから飾りましょう。また、家族の目にする玄関やリビングがおすすめ。不浄の場所であるトイレは避けて、もし処分する際は綺麗に水で清めてからにしましょう。
十二支は、元々中国では数字のような役割でしたが日本にはいってきてから、語呂合せから動物の性格がつきました。昔から目に見えないものを見える形にして愛でてきた日本人の思想に干支の置物は結びついたのです。
2024年の干支である「辰」は唯一空想の動物ですが、自然現象の「竜巻」が由来と考えられており、「辰」という漢字はとても縁起のよい字なのです。
由来を思いながら1年を見守る干支の置物を飾ってみませんか。


  

この記事で取り上げた商品