トップ > 073 水彩画家・藤田和平の美しき京都スケッチ。冬の名所を透明水彩で旅しよう

水彩画家・藤田和平の美しき京都スケッチ。冬の名所を透明水彩で旅しよう

2023.11.01

水彩スケッチで描かれた京都市街

滑石街道から京都市街を一望。

京都の水彩画家・藤田和平さんがおすすめする冬の京都の絶景をご紹介。水彩画教室を主催し、SNSでも話題の藤田さんは、絵になる風景を求め、京都中を駆け回っています。京都を知り尽くした藤田さんの瑞々しい水彩スケッチに描かれた、冬の京都の絶景をお届けします。

藤田和平さん

水彩画家・藤田 和平(ふじた わへい)

水彩画家。1963年京都市西陣生まれ、元・京都新聞記者。本業のかたわら個展などで水彩画を発表し続け、2019年独立。地下鉄東西線醍醐駅近くで教室「京都水彩画塾」を主宰する。
京都水彩画塾公式twitter 京都水彩画塾@suisaigajuku
https://twitter.com/suisaigajuku
藤田わへい公式twitter わへい水彩画@wahei_suisaiga
https://twitter.com/wahei_suisaiga

1.【伊根の舟屋】スケッチ旅で人気のスポットの穏やかな海

水彩スケッチで描かれた伊根の舟屋

悠然とした風景に、時の経つのも忘れてしまいそう。

京都府丹後半島の北東部に位置する街、伊根町。その沿岸部に建ち並ぶ舟屋は、船の収納庫の上に住居を構えた珍しい建築群として有名です。そのような舟屋群の風景を、藤田さんはどのようにスケッチしたのでしょうか。

【藤田さんのスケッチポイント】

「舟屋は、国内はもちろんのこと、旅先での風景をその場でスケッチする海外のアーバンスケッチのアーティストたちにも人気の題材です。あえて引いた画角で、舟屋が集まる伊根湾をおさめました。
伊根湾の地形に守られた穏やかな水面が、澄み切った冬空を大きな鏡のように映し、紺碧(こんぺき)に煌めく姿を表現しました。悠然とした景色とともに、新鮮な海産物も味わえる贅沢なスポットです。
脂がのった寒ブリや、日本海のカニなど、冬ならではの味覚もお楽しみ。ぜひ、京都市内から足をのばして魅力を味わってください」

対岸からとらえた舟屋の水彩スケッチ

対岸からとらえた舟屋。伊根湾をまわって対岸へ足を運べば、穏やかな湾口と島々が楽しめる。

2.【旧御所水道ポンプ室】穴場!絵になる名建築

水彩スケッチで描かれた旧御所水道ポンプ室

落ち着いた緑が、建物の赤レンガを引き立てている。

京都市の地下鉄東西線・蹴上駅を出て少し南東、琵琶湖疏水第三トンネルの出口に、レンガ造りの建物が佇んでいます。

旧御所水道ポンプ室は、京都御所へ防火用水を送るための建物。大正天皇が大津・京都間を船で通る計画に合せてつくられました。内部は非公開のため柵を越えて近づくことはできませんが、スケッチの穴場ポイントです。そのような旧御所水道ポンプの風景を、藤田さんはどのようにスケッチしたのでしょうか。

【藤田さんのスケッチポイント】

「柵を越えて近づくことはできませんが、対岸から絵になるポジションを探すことができます。
ポンプ室は、赤坂離宮などを手がけたことで知られる、建築家・片山東熊の作で、由緒ある建物。木々と赤いレンガのコントラストが美しく、私の絵の中でも人気の画題です。やわらかな冬の光が水面に反射して、由緒ある建物をやさしく照らす姿を描きました。冬ならではの美しさがありますね」

3.【醍醐寺・五大力さん】緊張感漂う一瞬を絵画で表現

水彩スケッチで描かれた五大力尊仁王会

立ち上る炎に、静かな熱気が伝わってくる。

京都市伏見区にある世界遺産・醍醐寺。真言宗醍醐派の総本山であり、874年に、弘法大師空海の孫弟子、理源大師聖宝によって開創されました。国宝五重塔をはじめ数々の国宝・重要文化財が有名です。

毎年2月23日には「五大力尊仁王会」が行なわれます。五大明王(不動明王、降三世明王、軍荼利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王)の力を授かり、その化身・五大力菩薩によって国の平和や国民の幸福を願う行事で、一千年以上脈々と続く、醍醐寺の最大の行事です。
全国から十数万人の参拝者が訪れるともいわれる伝統行事である五大力尊仁王会の風景を、藤田さんはどのようにスケッチしたのでしょうか。

【藤田さんのスケッチポイント】

「煩悩を焼き尽くす炎を背に、眉間に皺を寄せ、鋭く眼光を光らせる五大明王は、邪悪なものを祓(はら)うといわれています。不動堂前での柴燈護摩供(さいとうおおごまく)は、荘厳な雰囲気に包まれています。ゆらめく炎と対峙し、場を清める修験者の姿を描き、修験者の緊張感漂う一瞬を捉えてみました」

4.【大原】筆をとりたくなる山里の格別な雪景色

水彩スケッチで描かれた三千院のわらべ地蔵

三千院の穏やかな顔のわらべ地蔵。三千院へ足を延ばして。かわいいわらべ地蔵や風格ある灯籠など、思わず筆を取ってしまうものたちが。

苔むした灯籠の水彩スケッチ

三千院の苔むした灯籠も趣深い。

京都市の北東に位置し、市街地から少し離れた山里、大原。かつて貴人が隠棲した地としても知られ、のびやかな風景が広がっています。
冬は、市街地よりもグッと冷えこみます。凍てつくような寒さのなか、大原の田畑は静かに眠り、春になればおいしい農作物を育みます。京都の暮らしに欠かすことのできない豊穣の大地です。
自然のなかには三千院や実光院などの名所も点在し、見所の多い場所です。そのような大原の風景を、藤田さんはどのようにスケッチしたのでしょうか。

雪に包まれた大原の山里の水彩スケッチ

一面の銀世界に心奪われる。

【藤田さんのスケッチポイント】

「大原は描きたくなるような魅力的な風景が多いですが、冬は、平清盛の娘・建礼門院が終生を過ごしたことで知られている、寂光院方面の風景が格別です。京都から滋賀に抜ける国道367号線沿いの、静かな山里の風景が、一面の雪に包まれた様子を描きました。
厳しい寒さを感じさせながらも、大原の空は透き通るように明るく描くように工夫しました。寒さの中にも、住む人のあたたかな暮らしを想像させる、ぬくもりある風景を捉えました。
自然豊かな大原は、どの季節に訪れても描き手に筆を取らせてしまう。そんな魅力の詰まった場所です。ぜひ冬にも訪れてみてください」

5.まとめ

時間があれば京都の各地をめぐり、水彩画を描いているという藤田さんだからこそ知る京都の冬景色。水彩画家ならではの視点で切り取られた風景の美しさに改めて驚きます。伊根の舟屋、旧御所水道ポンプ室、醍醐寺の伝統行事、大原と、藤田さんの美しい水彩スケッチを見ているだけで、冬の京都をめぐり、旅したような気分になってきます。繊細でやわらかなタッチで描かれた、冬だからこそ見られる京都の情緒ある景色をぜひお楽しみください。