お茶好き3人に聞いたペアリング!新茶に合うお菓子や料理、そして楽しみ方
2023.04.01
一年に一度、初夏に味わえる爽やかな新茶。そのままでも十分においしい新茶ですが、春らしいご飯やお菓子と合せてよりおいしく楽しむペアリングに挑戦したり、うつわと一緒に楽しんだり、色を愛でたり……。多彩な分野で活躍する才気あふれる3人に、新茶の魅力をお聞きしました!
1.新茶の時期のペアリングの楽しみ方
待ちに待った新茶の季節がやってきました!そのフレッシュな香り、そして味わいは今だけしか楽しめない特別なもの。そんな新茶は、丁寧に急須で淹れて、単品で飲むだけでも十分においしいものですが、何かとペアリングすることで、さらに魅力が増すのだとか!
あんこ菓子に、お料理に、そして好みのうつわとペアリングすることでより新茶を楽しむ、文筆家・料理人・芸術家の個性豊かな3名に、お話を伺いました。貴重な新茶の時期に、みなさまもぜひ試してみてください。
2.新茶に合うあんこ菓子No.1はコレ!
「やさしい甘さの“あんこ”に寄り添う、新茶の爽やかな味は格別です」
「1日1あんこ」を公言し、「あんこのことならこの人に!」と多方面で活躍中のかがたにのりこさん。外出するときは、「ポーチに小さめサイズの羊羹を1本入れてお出かけする」そうで、“あんこ”は、かがたにさんにとってなくてはならない存在です。
さらに、「毎朝、食事のとき、仕事中と、日々欠かさずにお茶を飲んでいます。新茶の時期は本当に楽しみです」。そんなかがたにさんに、新茶とあんこ菓子をペアリングしてもらいました。
「まず大切にしたいのが、新茶ならではの青々とした風味。この味わいに寄り添う、やさしいあんこが好みです」と、紹介してくれたのが羊羹です。
「寒天であんこを寄せた羊羹は、糖度は高いのですが、口に入れたときの香りと甘さの広がり方が穏やかでマイルド。ゆっくりと浸透していく風味が、新茶の繊細な味を邪魔しません」
最近では、イチゴや柑橘類などを混ぜ込んだ羊羹も市販されており、「あんこと酸味は相性がよいんです。果物の爽やかな甘酸っぱさが、新茶と合いますよ」
羊羹以外と新茶をペアリングする場合は、「粒あんよりも、こしあんのお菓子を。小豆は皮の方が香りが強く、粒あんは濃厚な味がします。こしあんは、さらりとしているので、お茶の風味も楽しめます」と選び方のポイントも。
また、自宅であんこを炊く場合には、「下茹での際、数回水にさらして、灰汁(あく)を抜くこと。できれば甘さは控えめに。これなら粒あんでも新茶に合います。ちなみに、あんこの仕上げにレモンの皮をパラパラッとかけて酸味を添えると、初夏らしい味わいに仕上がります。新茶のお茶請け選びの参考にしてください」
3.新茶と春野菜が合うのはなぜ?
「新茶は軽やかな苦味があるから味のバランスが整います」
四条烏丸にあるフレンチレストラン「hidamarino(ヒダマリノ)」のシェフ、桝村浩史さんは、茶道のお稽古経験があり、日本茶の素晴らしさに心惹かれた1人。
「私は、『甘味・塩味・酸味・苦味・うま味』の五味のバランスが取れた味を目指しています。ところが、料理にあまりないのが『苦味』。お茶の渋さや苦さを合せてあげることで、より奥行きのある味わいに整えることができるんです」
特に、旬を大切にする料理において、新茶の清涼感ある風味は、大切にしたい味わいなのだそう。
「春野菜を代表するホワイトアスパラガスなど、爽やかで軽い苦味のある素材とのペアリングがおすすめです」と桝村さん。
お店では、アスパラガスをソテーし、その上に生ハム、ストロベリートマトなどをのせて、甘い、塩っぱい、酸っぱいを料理でつくり、そこに新茶を添えることで軽やかな苦味を加えて、一皿の味わいが完成します。
また、グラスに入ったアスパラガスのムースは、あおさのりのジュレがポイントです。
「新茶の風味には、ミネラル感のある食べ物がよく合うので、海藻類とのマリアージュもいいですね」
家庭で料理とペアリングする際には、ちょっとしたポイントがあるそう。
「新茶の爽やかな苦味と、山菜や菜の花など春野菜の苦味とは合せやすいのでぜひ。旬の貝類などをプラスすると、より味に深みが出ます。若竹煮など、甘味と苦味、ワカメのミネラルが感じられる料理との相性は抜群です。味付けや素材選びのコツで、新茶をこれまで以上においしく楽しめますよ」
RESTAURANT hidamarino
【住所】京都市下京区高倉通四条下ル高材木町218
【電話】12:00 〜15:00
【営業時間】喫茶13:00〜18:00
(L.O13:00)※ランチは要予約。
【定休日】水曜
【HP】http://hidamarino.com
4.好きなうつわで飲めば、新茶がよりおいしい!
「新茶の摘みたての芽吹きの色に惹かれます」
新茶をよりおいしくいただくために、うつわとのペアリングも楽しんでみませんか。うつわを変えることで、同じお茶でも表情ががらっと変わるから不思議です。
草や木々、山、海、川、地面を覆う芝、また身近な台所道具や飼っているうさぎなどなど、モチーフへのやわらかな眼差しが印象的なイラストレーター・ダイモンナオさんは、うつわ選びのセンスも抜群です。
「お仕事ではいろいろな題材を描きますが、きらびやかな花より、緑や草が好きなんです」と話すダイモンさん。取材が行なわれた場所「草と本」は、ダイモンさんが2020年8月にオープンした西陣の町家を改修した宿泊施設。自身のアトリエスペースを併設したこちらには、先ほどの言葉を裏付けるように、あちこちにグリーンが置かれています。
そんなダイモンさんが新茶を好きな理由は「私は初夏や芽吹き、黄緑色のものに魅力を感じるので、爽やかな色に惹かれます」とのこと。
仕事をするときには必ず飲み物を傍らに置いているというダイモンさん。普段のお茶もお気に入りのうつわをその日の気分に合せてペアリングして楽しみますが、新茶は特別だそうです。
「きちんと手を止め、落ち着いて淹れなくては。繊細な味を楽しまないと」と力説します。
「まさしく摘みたての、ほんの短い間だけの、フレッシュな味・香り・色をいただけるわけですから、巡り合えたら、逃したくないですよね」
古い町家を改修したアトリエの空気感・木の香りなどとともに、こうした季節の細やかなできごとがすっと溶け込み、ダイモンさんの創作に彩りを与えてくれているのでしょう。
5.まとめ
まさに三者三様!新茶とあんこ菓子、お料理、うつわとのペアリングをご紹介しましたが、いかがでしたか。期間限定だからこそ、新茶の香りと味わいは存分に楽しみたいもの。お三方の新茶の楽しみ方を参考にしながら、ぜひ新茶でホッとひといき、リフレッシュしてくださいね。