魅惑の作品を生み出す注目の芸術家の傍には、いつも日本茶があった!
2022.09.01
ときに繊細に、ときに大胆に、美しく。切り絵、日本画、帯アートで、思わず魅入ってしまう作品を生み出す女性芸術家3人のそばには、いつも日本茶がありました。制作の合間に、ひと息つきたいときに……三者三様のお茶との関わり方をお聞きしました。
「作業の合間の1杯のお茶は”滋養ある茶葉のスープ”私のエネルギーのもとになっています」
切り絵作家 望月めぐみさん
ときには、全長50mにも及ぶ一枚紙を使った切り絵作品を制作する望月めぐみさん。多くの人を魅了する、なめらかで緻密な、そして生き生きとしたラインは、デザインカッター1本で彫る(紙を刻むことを望月さんは、こう呼びます)のだとか。決して間違いが許されない作業だけに、たいへんな集中力が必要なことは想像に難くありません。そこで望月さんがたどりついたのが、少しずつの”ミールタイム”をはさんで2時間を一区切りとする制作スタイルです。
まずは朝、バナナや豆乳、コーヒーなどで”おめざ”を済ませて2時間、”おひる”の食パン1枚と卵と野菜スープを食べたら2時間、ロールケーキとチョコ2粒といった”甘おやつ”とお茶の後に2時間、柿の種など”塩おやつ”とお茶でひとやすみして2時間、そして作業が終わったらビールとおつまみを少しつまむという具合。驚くことに、この内容は数年来、ほぼ同じだといいます。
「食べる、ということの優先順位が低いんです」と笑う望月さんですが、おやつをいただきながら飲むお茶については、特別な思いがあるそう。
「3年ほど前、ニューヨークを訪れました。このときもやっぱり、食事もそこそこに美術館巡りに夢中になってしまって。ホテルに帰り、自分で淹れたお茶が、からだにしみわたるようで、『ああ、お茶は滋養のある茶葉のスープだ』と感じたんです」
それまで当たり前に飲んできたお茶に対する考えが変化したと話します。この日本茶への気付きのように、日々の暮らしで出合ったことや興味が、新たな作品づくりにつながっているのでしょう。
「昔から緑茶派。作業中も傍らに置き、1日に3~4杯は飲みますね」
日本画家 諫山宝樹さん
思わず目が離せなくなるような美人画、キャッキャッとはしゃぐ声が聞こえてきそうなかわいい唐子(からこ)たちの絵、さまざまな社寺への奉納画……。諫山宝樹さんが手がけるのは、そればかりではありません。京都市立芸術大学の大学院在学中から「東映京都撮影所」で時代劇のふすま絵などを制作していたという経歴の持ち主で、携わった映像作品は『大奥』『るろうに剣心』『利休にたずねよ』ほか多数。このほか、イラストの受注などにも対応し、活躍の場の広さに驚かされます。
そんな諫山さんの仕事場は、ご両親と暮らす自宅の一室。広い作業机や、絵を描く資料であろうたくさんの書籍が詰まった書棚、学生時代の大きな模写作品などが並んでいる様子は、なるほど日本画が生まれる現場らしくありつつ、よい意味でどこかゆったりとしたアットホームな雰囲気が漂います。
「お茶といえば、思い起こせば、うちはいつも母が朝から緑茶を淹れている家でした。験担ぎもあるんでしょうね、子どもの頃は要らないといっても追いかけ回されて(笑)、飲まされていました。で、気付けばもっぱら緑茶派です」と諫山さん。
仕事中は大ぶりのガラスマグにお茶を汲んで手元に置き、1日に3~4杯は飲むといいます。作品と同じスペースにお茶を置くのってご法度では?と尋ねると、「すでに筆洗がありますからね。もう、そこは気をつけるしか」とさらり。かっこいい! 諫山さんにとって絵を描くことは、日常生活の一部のようです。そして、大らかで、繊細、かわいらしい、豊かな作者の人柄が、作品にも表れていると感じます。
「テーブルを帯で飾れば、華やかなお茶時間になりますよ」
ORIOBI 白幡磨美さん
1本の帯をそのまま使って、アート作品に仕立てる「ORIOBI」。白幡磨美さんは、活動を京都で行ない、生活の拠点は静岡に置いており、「どちらも有名なお茶の産地ですね」と笑いますが、普段からお茶をよく飲んでいるのだとか。
「食事の際はもちろん、作品づくりをするときも、たくさんつくって、マグカップに入れて机に置いています。作品づくりの傍らにはいつもお茶が。味が足りないなっていうときは、少し抹茶を足してみたり。自分なりのブレンドを楽しんでいます。お客様がいらしたとき、家族が集まるときには、お気に入りの急須と茶器を使ってお茶を淹れます。日常生活にも、おもてなしにも、いつもお茶が傍らにありますね」
そんな白幡さんのお茶時間に欠かせないのが、テーブルを華やかに飾る帯を使ったコーディネート。
「帯をテーブルセンターにするのがおすすめです。帯には金糸が織り込まれたものも多く、テーブルの上でキラキラと輝き、とても華やかなティータイムになりますよ。今回、私がテーブルに添えた作品のように立体的に折り重ねれば、フラワーアレンジメントの替わりにもなって、とっても素敵なんです」
また、「この帯はおばあちゃんのもので、こんな思い出があったのと、エピソードを家族や友人と共有する機会にも。帯を装飾品として日常使いすることで、家族や帯の持ち主の想いにふれて、大切に継いでいくことができる点にも喜びを感じています」とも。
家族から受け継いだ帯をタンスに眠らせるのではなく、日常で輝かせてあげてほしいという白幡さんのアイディア。ぜひ、お茶時間に取り入れてみてください。家族の会話がきっと弾むはずです。
京都で注目を浴びる3人の女性芸術家の共通点、それはお茶が大好きで、よく飲んでいるということでした。皆さんもリラックスしたいときはもちろん、気分を切り替えたいときなど、急須で丁寧に淹れたお茶を飲んで、健やかな日々をお過ごしください。