トップ > 008 モデル・はなさんが語る、40代でみつけた一生の趣味・茶の湯のこと

モデル・はなさんが語る、40代でみつけた一生の趣味・茶の湯のこと

2022.08.01

モデル、テレビ、エッセイなど、多方面で活躍するはなさんが、茶道のお稽古を始めて早6年。『はな、茶の湯に出会う』に続く2冊目となる茶の湯の本『今日もお稽古日和』が2022年5月に発売されました。「年齢に関係なく楽しむことができる」というはなさんに茶の湯の魅力をお聞きしました。

はなさんおすすめ モデルの仕事にも活きる茶道

( profile )
1971年横浜市生まれ。2歳からインターナショナルスクールに通い、上智大学で東洋美術史を専攻。17歳からモデルを始め、その後、テレビの司会、ナレーション、エッセイの執筆など活動の幅を広げる。英語・フランス語に堪能で、その語学力を生かした絵本も出版。趣味はお菓子づくりや茶道、仏像鑑賞。著書に『ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう』(東京書籍)、『はな、茶の湯に出会う』(淡交社)などがある。

茶の湯の稽古で感じた、日本人の思いや感性を、
私のフィルターを通した言葉で綴ってみました

―――この度、茶道にまつわるエッセイ本を出版されましたね。おばあ様のお着物を着たいというお気持ちが、茶道を始めるきっかけとのことですが。

はな:祖母から受け継いだ着物を着ていく場所がほしかったのと、よく、祖母と一緒にお茶席に参加することがあったので、その頃から、茶道に興味をもつようになりました。そんなときにテレビ番組でご一緒した、茶道研究家・筒井紘一(つついひろいち)先生の千利休のお話がとても面白く思えまして。その後、淡交社の出版する雑誌『淡交』で、茶の湯の世界の職人さんのお話をうかがい、体験しながら茶の湯を勉強していくという連載が始まりました。それと同時に、本格的に習い始めましたね。

―――そのときの連載が、一冊の本『はな、茶の湯に出会う』になりました。茶の湯というのは、茶事、茶室、趣向、香(こう)、菓子、着物、道具など……ほんとうに奥深い文化が関わっている世界なのですね。そして、2022年5月の末に、新しく『今日もお稽古日和』というご本が出版されましたね。

はな:はい。日々の稽古の様子や、また感銘を受けた茶人たちのふるまい、日本文化の奥深さ、季節の変化など、そのときどきの気付きなど、茶の湯の稽古を通して感じた日本人の思いや感性を、私のフィルターを通して、自分自身の言葉で綴ったエッセイです。稽古を始めたばかりの頃の思い出すのも恥ずかしい失敗談も綴っているので、茶の湯の世界を等身大で感じることができ、始めたいけれどためらっているという方でも、「これでもいいんだ!」と安心して楽しく読んでいただけると思います。

―――はなさんが、心惹かれたという千利休の美意識というのはどういったものでしょうか?

はな:利休の世界というのは、私が仕事としている華やかな世界とはまた違った、そぎ落とされた美の境地ですね。また、利休が得意だったといわれる、「茶杓の銘を考える」というお稽古があるのですが、それには、季節の変化にもっと目を向けたり、知らなかった名前を調べたり、そこにひねりを加えたりという行為が伴います。そういうことも、とても楽しいですね。

―――茶道を続けていらしたことで、ご自身の感性や、ふるまいに変化がありましたか?

はな:私は、もともとモデルという仕事柄、姿勢や立ち振るまいには気を付けていますが、お茶を始めてから、お辞儀をはじめ、これまでふだん生活の中になかった所作(しょさ)や事柄が、自然と身に付いてきたように思います。季節の移り変わりにも、これまでよりも敏感になった気がしますね。それらが、モデルやエッセイなど、これまで仕事としてやってきたことに、いろいろな形で反映されているのではないかと思います。

淡交社『今日もお稽古日和』

歳時記はじめ、茶道を通じて感じたことをはなさんの飾らない言葉で綴ったエッセイ。淡交社『今日もお稽古日和』1,760円(税込)

非日常的な空間で行なう茶の湯も、日常に欠かせない急須で淹れるお茶も
大切な日本の文化だと思います

―――京都の宇治は、茶どころとして有名ですが、宇治にはいらしたことはありますか?

はな:はい、もちろん。『淡交』の連載中にも訪れました。宇治の茶畑の瑞々しい光景には、ほんとうに心洗われるような感動がありますね。

―――月刊『茶の間』では、お茶を急須で淹れて飲むことを、積極的に薦めております。はなさんは、ふだんはどんなお茶を楽しんでおられるのでしょうか?

はな:茶の湯は、非日常的な空間で行なって、優雅なお点前があったり、いつもとは違った方々と出会ったり、たくさんの気付きの心を与えてくれます。でも、日常生活で飲むお茶は、私も、子どもの頃から、祖母が淹れてくれたお茶の暖かさや香(かぐわ)しさに馴染んできていましたから、あたりまえのように、急須から淹れていただくのが習慣になっています。特に朝ごはんは、和食が多いので、当然のように一緒にお茶をいただきます。私は、ほうじ茶が好きなのですが、そのときどきの料理に合ったお茶を淹れていただくのが、至福のときになります。急須とお茶、それは、日本に根付いた、欠かすことのできない文化だと思います。

淡交社『今日もお稽古日和』

茶の湯はいつからでも始められる、一生の趣味です

―――改めて、はなさんにとって、茶道は日々の暮らしの中で、どんな役割があるのでしょうか?

はな:これまでも、自分の住む国、日本の文化を勉強してきましたが、茶の湯を始めたことで、さらに広いベクトルで、日本文化をみられるような気がします。たとえば、「お茶会を開く」ということには、一服のお茶を飲んでいただくために、究極のおもてなしするという、日本人ならではの細やかな気遣いが息づいています。そうやって相手のことを考えて、なにかをすることも楽しいですね。私はそれを、ホームパーティーにも活かしていきたいと思っています。

―――これから茶道を始めようという方に、アドバイスを。

はな:よく、茶の湯はハードルが高いと思われているようですが、歴史を学び、本物を見極める目を養い、感動する心を持てるのが茶道です。だから、興味をもったら、即、始められ、まずは楽しんでください。年齢はまったく気にすることはありません。私のお茶のお稽古には、90代の先輩もいらっしゃいますから、本当に永く楽しめる一生の趣味だなあと思います。

おわりに

謙虚に、前向きに茶の湯に向かう等身大のはなさんを通してみる茶の湯は、大切なことを気づかせてくれる魅力に満ちています。流されてしまいがちな日常とは違う、茶の湯という非日常な場所だからこそなのかもしれません。茶の湯の世界に足を踏み入れるきっかけとなる1冊です。