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国際中医薬膳師が教える夏バテ対策!症状改善のカギは食事とお茶!

2022.08.01

暑い日が続くと、つい冷えた飲み物や食べ物ばかり口にしがちです。しかし、実はそれは逆効果! 夏バテの原因を自らつくっているかもしれません。薬膳や東洋医学に詳しい国際中医薬膳師・瀬戸佳子先生に、夏バテ対策のコツを伺いました。

国際中医薬膳師・瀬戸佳子先生

東洋医学では夏は「」の季節。
だから、ほどよく汗をかく必要があります。

国際中医薬膳師・瀬戸佳子先生

教えてくれた人: 瀬戸 佳子 先生

早稲田大学大学院理工学研究科修了。国際中医薬膳師。登録販売者。会社時代に激務により体調を崩し、東洋医学を取り入れて回復したことをきっかけに薬膳を学び始める。鍼灸院にて東洋医学に基づいた食事と漢方の相談を行なっている。

夏バテを招く「冷え」にご用心

猛暑日が増えると、来院される患者さんから「消化不良であまり食べられない」「体力がついていかない」「水分を摂っているのにしんどい」といった、いわゆる夏バテの悩みを伺います。
夏バテは暑さが原因と思われがちですが、実は夏はからだを冷やしやすい季節。現代は冷たい飲食物や冷房がどこにでもあり、夏でも涼しい環境が手に入ります。おかげで快適に過ごせるように見えるのですが、東洋医学では「夏バテを招きやすい環境」と捉えます。
人間は恒温動物なので、内臓やからだの表面を冷やすと、からだをあたためるために汗腺(かんせん)を閉じます。すると、汗をかくことができないので、熱が体内にこもります。
冷房はからだを外から冷やし、冷たい飲食物は胃腸を冷やして弱らせます。冷たいビールやアイスクリームを嗜(たしな)んだり、冷房の効いた部屋で一日中過ごしたりすると、からだの外側と内側が冷えてしまうので、熱を外に出すことがきません。このように夏バテの多くは、熱を外に出せない状況を、自らつくり出しているのが原因です。
東洋医学では夏の暑さのことを「暑気(しょき)」、暑さが及ぼす悪影響を「暑邪(しょじゃ)」といいます。暑気を暑邪にしないためには、暑さに順応できるからだをつくること。日々の生活習慣をコントロールして日常的にからだを労われば、夏バテは予防できます。
夏は本来、太陽の光を存分に浴びて生き生きと活動する季節。暑さに立ち向かうのではなく季節にうまく乗ることを心がけて、からだを整えましょう。

熱を外に出すために汗をかきましょう

からだの調子が整っているかどうかを確認するポイントは5つ。まず呼吸が楽になること。食べ物をおいしいと感じられること。よく眠れること。尿と便が快適に出ること。そして楽しい気持ちで過ごせることです。私の専門である薬膳では、食と生活の習慣を整えることで元気な状態に導いていきます。
薬膳の元にある東洋医学の考え方は、「陰陽五行説」に基づいています。「木」は「火」を起こし、「火」の灰が「土」を生み、「土」から「金」が生まれ、「金」はその表面に「水」を生み、「水」は「木」を育てる……といった具合に、自然界の五つのものは循環し合っているという考えです。
からだの中にも「五臓六腑」といわれるものがあり、自然界と同様、それらが互いに助け合ってからだを維持していると捉えています。西洋医学の臓器とは異なるのですが、体内には肝、心、脾(ひ)、肺、腎の五臓があり、それぞれ木(肝)、火(心)、土(脾)、金(肺)、水(腎)に対応しています。

五臓六腑の図

季節にも五行が対応していて、夏は五行の「火」に属し、五臓の「心」(心臓や血管などのこと)に対応します。夏の不調を改善するポイントは、夏の暑さに順応できるからだにすること。つまり、水分と熱の循環が汗や尿を通じてスムーズに行なわれることが大切です。適度な暑さを感じて汗をかき、 熱を外に出し、水分を補給することです。
25度を超える日であれば、肌が常にしっとりするぐらい適度な汗をかくことがおすすめです。猛暑のなか汗をかくのは大変なので、陽が落ちて涼しくなった時間に、軽くウォーキングをするのもよいでしょう。湿気をからだに溜めないようにすれば、むくみも予防できます。
水分補給の鍵は胃腸に負担をかけないこと。暑いからといって冷たいものばかり摂るのは胃腸を弱らせるので逆効果です。胃腸が消化不良を起こすと、せっかく汗をかいても水分がうまく吸収できず、胃腸も冷えて、からだが暑さについていけません。
年配の方は、水分が足りていないことに気づきにくい傾向があります。お茶や食事の時間を活用して、こまめな水分補給を習慣づけてください。意外かもしれませんが、食事でも水分を補給できます。水分を摂ったら、尿や便として排出する。このめぐりを意識しましょう。

急須でお茶を入れる図

まずは普段の食事
健康なからだづくりをしましょう。

夏こそあたたかいものを。おすすめは赤い食材

夏バテが起こりやすいかどうかは、冷えなどの外的要因以外にも生活習慣の積み重ね、つまりからだの中に「きっかけ」がどれだけあるかも影響しています。そうした内的要因は、食事で管理することができます。東洋医学では「未病」といって、病気にならぬよう健やかな状態を保つことを心がけています。
夏の養生の基本は、胃腸を元気に保つこと。消化に負担がかからないものを食べるのが一番ですが、「消化がよい」のと「口当たりがよい」のは異なります。夏に好まれる、口当たりのよい、生(なま)ものや冷たいものは、消化に負担をかけます。
アイスクリームやビールは夏の胃腸に負担をかけるものの代表です。ごほうび程度ならよいのですが、アイスクリームのような甘く冷たい乳製品は消化に悪く、胃腸を弱らせます。また、ビールに含まれるアルコール類は分解するのに水分を使い、大量に摂取すると、からだに必要な血管の水分まで排出してしまいます。また、胃酸を薄めるので食べ物が充分に消化されません。嗜む程度、ほどほどの量にしましょう。
夏場におなかの調子が悪い人や体力が落ちる人は、まず冷たいものを控えること。食材に火を入れると、吸収しやすくなります。加熱調理してあたたかく食べるように心がけてください。
そして旬の夏野菜を積極的に摂りましょう。最近はハウス栽培が盛んなので、一年中どの季節の食材も手に入りますが、旬の野菜にはからだを季節に順応させてくれる力があります。特に露地のものは太陽の光をたっぷり浴び、栄養満点です。
夏におすすめの食材は、トマトなどの実の野菜や、梅干、熱を冷ましてくれる西瓜(すいか)、小豆、赤身肉など、「赤い」食べ物です。毎日の食事に取り入れて、暑い夏を快適に乗り切りましょう。

瀬戸先生が投稿する毎日のお弁当4種

瀬戸先生が毎日のお弁当の写真を投稿している、インスタグラム。季節の食材を用い、からだを整えるための工夫が随所に見られる。スープジャーを活用した調理の工夫や、おいしそうに見せる彩りも参考になる。
❶夏の疲れがたまった秋の日は青魚で血流よく。
❷ヤングコーンとカレー炒めご飯で胃腸を元気に。夏の暑さ対策にズッキーニの鶏団子スープ。
❸春は肝臓を元気にするため緑の葉物野菜を。
❹冬におすすめの、腎を補い血液を補ってくれる牡蠣のご飯、山芋とカブのお味噌汁。

夏のおすすめ食材

トマト

トマトは古くから「医者いらず」と言われるほど、夏に必要な栄養がたっぷり含まれています。できれば夏の間は毎日一個食べたい食材です。
トマトには、からだや喉を潤し食欲を増進させ、血液の熱をとり、胃を元気にしてくれる効能があります。東洋医学の「瘀血(おけつ)」は血液が滞った状態を指し、頭痛や肩のこり、くすみなどの肌トラブルの原因になります。トマトはこの瘀血を解消してくれるものです。
加熱調理がおすすめですが、そのまま飲めるトマトジュースを常備しておくと便利です。料理のときにツナとトマトジュースでそうめんを和えてもいいですし、コーンやツナなどと一緒に炊き込みご飯にしてもいいですね。

梅干

古くから「梅は三毒を断つ」と言われます。三毒とは食・血・水の毒を指し、梅干は民間伝承として健康維持に役立つ食材として重宝されてきました。食材が傷みやすい夏場はお弁当に入れると防腐対策になることで知られています。
夏バテを防ぐには、胃腸の調子を保つことが鍵になります。梅干には夏に摂りたいクエン酸が含まれており、これからの時季に積極的に摂りたい食材です。
ご飯を炊くときに一粒入れるとよいでしょう。煮物やスープ、炒め物に入れると、酸味で肉類がやわらかく仕上がります。酸味は食欲を増進してくれるので、食の進まないときにもおすすめです。梅ジュースや梅肉エキスも活用してください。

夏こそあたたかいお茶がおすすめ。
その理由は清熱瀉火(せいねつしゃか)にありました。

休憩中にお茶を飲む先生

お茶で熱を冷まして心をすっきりと

薬膳ではすべての食材には性質があると考えています。薬膳では緑茶は『清熱瀉火』、つまり「熱を除く」作用も期待されています。
また、暑いときこそ、弱りがちなからだや心を労らなくてはいけません。そのため、冷茶ではなくあたたかい状態で飲むことをおすすめします。これまでに冷たいものがからだに負担をかけることはお伝えしましたが、あたたかいお茶を飲むことは心のリフレッシュにもつながるのです。
熱いのが苦手な方は、淹れてから少し時間が経ったものでも大丈夫。私も暑い日にも休憩時間に急須で淹れたお茶を飲んで、気分を切り替えています。
ただし、一度に大量にお茶を飲んだり、濃いものを飲んだりするのではなく、こまめに少しずつ飲むのがポイントです。夏のお茶時間には、健康成分がたっぷりと抽出された深蒸し茶がおすすめです。胃が弱い方は薄めに淹れたり、玄米茶にしたりするのもおすすめです。

お茶にまつわる4つの言葉

一、清利頭目せいりとうもく
休憩時に緑茶を取り入れると、気分がスッキリします。日中気分がモヤモヤするときは、ぜひ緑茶の苦味がもつ清涼感で気分転換を。

二、止渇しかつ
緑茶はからだに適度な水分を補給します。「気づいたときには脱水症状になっていた」なんてことにならないよう、お茶の時間を決めて、こまめな水分補給を心がけましょう。

三、利水りすい
夏は炎暑によってからだに熱や老廃物がこもりがち。お小水からこの熱を逃してあげるのが暑さ対策では大切です。夏バテ防止のために、飲んだときにうっすら汗をかくくらいの熱いお茶をしっかりと摂りましょう。そして、水分補給をするだけでなく、発汗や排尿で水分をからだから出すことが大切です。

四、除煩じょはん
暑さがからだにこもると、煩熱(はんねつ)といって、こもった熱のせいでイライラしたり、胸がざわついたりするようになります。イライラしたときこそ、緑茶で一息つきたいものです。急須でゆっくりとお茶を淹れる時間を持てば、心を落ち着かせて安らぎをもたらしてくれます。

最古の薬書

最古の薬書『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』や、1596年頃、明朝の時代に李時珍(りじちん)が著した『本草綱目(ほんぞうこうもく)』にも、お茶に関する記載がある。

源保堂鍼灸院

源保堂鍼灸院

【住所】東京都渋谷区神宮前4-17-3アークアトリウム101
【電話】03-3401-8125

おわりに

夏バテの原因は、実は自分でつくっている部分もあるのですね。効果的な食事とお茶、手軽なので簡単に取り入れられそうです。